セレモニー? 戦力? マ軍はなぜイチローと再契約をしたのか
シーズン最終戦から2日後の7日(日本時間8日)、大リーグのマーリンズは、イチロー外野手(41)と1年契約を更新したと発表した。昨年FA選手になったイチローの所属が決まったのは、年も明けた1月28日。「ペットショップで並んでいる可愛い子たちがどんどん売れていって、ちょっと大きく成長した犬は残っている、そんな気持ち」と独特の表現で“待つ身”の心境を語ったが、今回はプライスら大物FAらに先駆けて、FA選手で一番乗りの契約決定だった。 一報が米国でも大きく取り上げられたのは、タイミングが極めて異例だからだ。普通、今月中に42歳を迎えるベテランが安打91本、打率.229に終わった場合、その処遇はキャンプ寸前まで不透明だろう。場合によってはマイナー契約やキャンプ招待選手の立場になることもある。だが、イチローが、こんなに早く再契約を結んだ背景には、メジャー3000本安打と将来の殿堂入りという手形があることは確かだろう。 米国ヤフーの電子版では「イチローが(試合で)インパクトを与える日々はすでに終わっているし、マーリンズもそれが解っている。だが、球団は3000本に挑戦する価値をみたのだろう。おそらく、セレモニー的な再契約以外の何ものでもないが、我々は、彼がすでに持っているとてつもない業績を、更に固めていく様子を見ることができる」と報じている。 マ軍は、本拠地の観客動員が3年連続で増加。今年は前年度より約2万人増で175万2235人だったが、リーグ28位で、まだ成長の余地がある。イチローが、マ軍のユニフォームで3000本安打の金字塔を達成すれば、カウントダウンの段階から入場券の売り上げ、記念グッズの販売、メディア露出などの営業効果は計り知れない。また、スタントンら現役スター選手はいるが、殿堂入りしているアンドレ・ドーソンは、エキスポズやカブスのイメージが強く、トニー・ペレスもレッズで活躍した選手で、球団史に残るレジェンドがいない。イチローは、球団にとっては最高の看板選手なのだ。 とはいえ、イチローとの再契約は、単なる話題性だけではない。 この日行われた会見に出席したサムソン球団社長は、「彼が殿堂入りの最有力候補であることや、いざという時のブルペンの最終手段であることは別として(笑)」と、最終戦で1回1失点も切れ味鋭いスライダーを披露したイチローの仰天登板も引き合いに出しながら、「彼は、チームに好影響を与えてくれる選手なのだ」と強調した。 「3000本を達成したら、それを祝うことは我々にとって名誉であることに違いないし、もちろん、それは大きな祝福になるだろう。だが、彼の獲得は、チームが正しい方向に行くためのものだ。彼が日々どうやって試合に備えるか、その知識、試合への情熱、それらは若い選手のお手本だ」と言い、ハル球団本部長は「我々のチームは才能ある若い選手が多い。このチームを、次のレベル、すなわちポストシーズンで戦うチームに押し上げるために、イチローはふさわしいリーダーだ。若いチームを機能させる存在なのだ。我々が次のステージに成長するために、ダイナミックな影響を与えてくれる存在だ」と、戦力として、そして若手の手本となるリーダーとして重要なピースであることを力説していた。 米メディアによると年俸は、据え置き200万ドル(約2億4000万円)。ビジネスと戦力の両面を考えても球団にとって、お買い得な値段である。