真の愛国心とは? ナワリヌイ氏の意志を継ぐ、妻ユリアさんの叫び 「プーチンは希望、自由、未来を壊すため殺した」
<刑務所で急死した反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイの妻ユリアがメッセージを公開。国の未来のため行動を起こそうと呼びかけた>【木村正人(国際ジャーナリスト)】
[ロンドン発]北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所で獄死した反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)のユーチューブ・チャンネルで19日、妻ユリアさん(同)は「このチャンネルに登場するのは今日が初めてです。本来ならこの動画は撮影されるべきではありませんでした。私の代わりに別の人(夫)が出るべきだったからです」と訴えた。 【動画】アカデミー賞受賞ドキュメンタリー『ナワリヌイ』予告編 「その人はウラジーミル・プーチン(露大統領)に殺されました。3日前、プーチンが私の夫アレクセイ・ナワリヌイを殺した理由を知っています。プーチンは私の子どもたちの父親を殺しました。プーチンは、私が持っていた最も大切なもの、最も親しい最愛の人を奪いました。極北の永遠の冬の中であなたたちすべてからナワリヌイを奪ったのです」 「プーチンはアレクセイ・ナワリヌイを殺すことで、私たちの希望、自由、未来を破壊し、無効にするために殺したかったのです。ロシアは変わることができます。私たちは強く、勇敢で、信じ、戦い、違う生き方を望んでいます。私たちは手を携えて、この国の未来を美しいロシアに変えていきましょう」とユリアさんは訴えた。 ナワリヌイ氏は3年間の拷問と苦痛の末、流刑地で死んだ。他の受刑者のように刑務所に収容されていただけではない。拷問を受け、隔離されたコンクリートの懲罰房に閉じ込められた。6~7平方メートルの独房にはスツールと流し台、床にあいた穴がトイレだ。壁に取り付けられたベッドは横になる幅もない。コップと1冊の本と歯ブラシがあるだけだ。 ■ナワリヌイは「何のために戦うか、一瞬も疑わなかった」 ユリアさんは「夫は家族に手紙を書く紙もペンも与えられませんでした。拷問と飢えに苦しんでいたにもかかわらず、あきらめませんでした。私たちを励まし、笑い、冗談を言い、鼓舞してくれました。夫は自分が何のために戦い、苦しんでいるのか、一瞬たりとも疑うことはありませんでした。プーチンが夫を殺したのはこの不屈の魂のためでした」と続けた。 「プーチンは夫を卑怯な方法で殺しました。同じように卑怯なやり方で、今、彼の遺体を隠し、母親に見せることも、引き渡すことも拒んでいます。ウソをつき、致死性の神経剤ノビチョクの痕跡が消えるのを待っているのです。誰がどのようにこの卑劣極まりない罪を犯したのかを突き止め、名前と顔を明らかにします」 「しかし夫のために、私たち自身のためにできる最も重要なことは闘い続けることです。これ以上は不可能に思えるかもしれないが、私たちはもっと団結して、この狂気の政権を殴りつける必要があるのです。プーチンとその仲間たちが祖国を機能不全に陥れています。私は、あなたがズタズタに引き裂かれているのを感じています」 2020年8月、モスクワに戻る機中でノビチョクを盛られたナワリヌイ氏はドイツで治療を受けた際、身の安全を守るためそのまま残ることもできたが、投獄されるのを覚悟の上でロシアに戻った。その理由についてユリアさんは自問自答する。「なぜ彼はロシアに戻ったのでしょうか。なぜ彼は、一度自分を殺しかけた連中の魔の手に進んで身を投じたのでしょうか」