真の愛国心とは? ナワリヌイ氏の意志を継ぐ、妻ユリアさんの叫び 「プーチンは希望、自由、未来を壊すため殺した」
「あきらめて何もしなければ悪が栄えるだけだ」
なぜナワリヌイ氏は犠牲を払ったのか。ユリアさんは「結局のところ彼は平穏に暮らし、自分と家族の世話をすることもできたはずです。公に話さず、調査せず、名乗り出ず、闘わない選択肢もありました。しかし、彼はそうしませんでした。アレクセイは世界の何よりもロシアを愛していたからです。彼は私たちの国を愛し、あなたを愛していました」と訴える。 「彼は私たちを信じ、私たちの力を信じ、私たちの未来を信じ、私たちがベストに値するという事実を信じました。言葉ではなく、行動で。そのために命を捧げる覚悟ができるほど深く、誠実に。そして彼の計り知れない愛は、私たちが彼の仕事をいつまでも続けるのに十分なものです。アレクセイのように激しく、勇気を持って」 「私には他に国がありません。引きこもる場所もありません。他の国も、他のモスクワも、他の家族も、あなたたち以外の人々もいないのです。しかし、どうやって生きる力を得ればいいのでしょう。彼の記憶の中に、彼のアイデアの中に、私たちに対する彼の無尽蔵の信頼の中に私は力を求めます」 「アレクセイを殺したことで、プーチンは私の半分を、私の心と魂の半分を殺しました。しかし私にはまだ残りの半分があり、半分になった心と魂は私にあきらめる権利はないと教えてくれるのです。黙って抵抗するのではなく、街頭に出ましょう。私たちが行動を起こさなければ、他の誰も私たちを守ってはくれないのです」 「私たちは1人ではありません。何かを成し遂げようと思えば必ず成し遂げられます。私は夫の大義を引き継ぎ、祖国のために闘い続けます。ともに立ち上がり、私たちにまとわりつく悲しみや終わりのない痛みを分かち合うことを求めます。私たちの未来を殺そうとしている者たちへの怒りと憎しみを分かち合ってください」とユリアさんは呼びかけた。 06年、致死性の放射性物質ポロニウム210で暗殺されたロシア連邦保安局(FSB)元幹部アレクサンドル・リトビネンコ氏の妻マリーナさんは英政府がプーチンとの取引に揺れる中、「おそらくプーチンやニコライ・パトルシェフFSB長官(当時)は承認していた」という英公聴会報告書の結論を引き出すまで孤軍奮闘した。支援は少しずつだが、広がった。 20年、プーチンの同盟国ベラルーシの大統領選に立候補する予定の民主活動家の夫セルゲイ氏が当局に拘束され、代わりに自分が立候補するまで一介の英語教師に過ぎなかったスベトラーナ・チハノフスカヤさんは民主派リーダーとして国外から抗議活動を主導した。妻の叫びは国内外の魂を揺さぶった。 暗殺や投獄された反プーチン派の政治家の妻たちは死を恐れず、次々と立ち上がっている。 国旗を振りかざし国民に愛国心を求め、密室で権力を握ったとたん私服を肥やし、国民の命を無慈悲な戦争に放り込む。ロシアの美しい大地は今やクレプトクラシー(盗賊政治)と軍産複合の戦時体制に支配されている。ナワリヌイ氏の道徳的勇気と、プーチンが描くグロテスクな歴史と愛国心。 ユリアさんは3月の露大統領選に向け、動き出すとみられている。プーチンのプロパガンダマシンは早くもユリアさんに西側情報機関の手先として活動するセレブというレッテルを貼り始めた。「あきらめて何もしなければ悪が栄えるだけだ」(ナワリヌイ氏の遺言)。ユリアさんだけでなく、私たちにもあきらめるという選択肢はない。