「エモい」「キモい」を文章で気軽に使う危うさ、手軽な表現ゆえに「断絶」させてしまうものに目を向けて
自分の気持ちを文章で伝えたい、そう思っても、どうやって表現したらいいかわからないと悩む人は多いのではないでしょうか。そんな悩みと向き合い、22年間、試行錯誤しながら文章を書き続けてきた、テキストサイト「Numeri」の管理人・ライターのpato(ぱと)さん。 自分らしく、かつ、相手の心をつかむ文章の作り方を、pato(ぱと)さんの著書『文章で伝えるときいちばん大切なものは、感情である。 読みたくなる文章の書き方29の掟』より一部抜粋・再編集してご紹介します。
■おもしろい体験が「つまらない文章」になってしまう 「気持ちを伝えたいけど、ありきたりな文章になってしまう」と悩んだ経験はないだろうか。 すごく貴重な体験をしたはずなのに、いざ文章にするとなんだかつまらなく見える。思い入れのある提案だったのに、資料やメールの文章にしたらあっけないほど凡庸になってしまった。そんなケースだ。 なにを隠そう、僕もそんな経験の繰り返しだった。22年前に自身のサイトを立ち上げ、「これはおもしろい!」と思って意気揚々とインターネットに投下した文章は、たった1人にしか読まれなかった。
そこから、どうやったら読んでもらえるか、伝わるかと考え続けて今がある。 奇抜な表現を避けようと思って綺麗な言葉を並べればいいのかというと、これまたそうではない。そうすると独自性が失われ、埋もれ、ますます読まれなくなっていく。 一体どうしたらいいのか。そんな葛藤を経てたどり着いたのが、「断絶の言葉」を使わないという方法だった。 文章によって表現しなくてはならない一番大切な情報は感情である。それも書き手の感情だ。なぜなら、それが唯一無二と言っていいほど独自性のある情報だからだ。それは読み手に提供される情報としては相当な独自性を持っているものなのだ。
「すごく好き」 「嫌い」 「嫌な感じがする」 「死ぬほど笑った」 「悲しい」 「苦しくなる」 文章に限らず、我々が誰かに伝える情報は、突き詰めていくと自分はどう感じるかに行き着く。どんな事象であっても、それを受けて自分がどう感じたか、我々はそれしか伝えていない。そのほかの部分はこれを効率よく伝えるための装飾に過ぎない。ある事象に対して著者はどう感じたか、突き詰めればそれだけしか伝えていないのだ。