『地面師たち』が大ヒット中のNetflix。“破格の給料”でも業界人が「絶対に入社したくない」ワケ
わずか1年半で退職……厳しい環境に業界からは不人気
この話を聞く限り、ドラマ制作者にとってこれほどの好条件・好待遇はなさそうに思える。実際に『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』、『不適切にもほどがある!』といった作品を手掛けてきたTBSプロデューサーの磯山晶氏が、Netflixと5年間にわたる契約を締結したことも発表された。 しかし、現場で働く人々の声を集めてみると、Netflixについてあまり乗り気ではなさそうだ。前述のプロデューサーのA氏は言う。 「私は絶対に入社したくない。磯山さんのように実績十分なら、5年契約をしてもらえるのでしょうが、Netflixに転職した後輩の女性プロデューサーは、1年半ほどで退職しました。給料は破格だったものの、再生数をかなりシビアに評価されて、メンタルが持たなかったと聞きました。実際に数年で契約を切られる人も多いそうです。 その点、キー局に残っていれば視聴率や見逃し配信の再生数でグチグチ言われることも実は少ない。リスクを取ってまでNetflixに行こうと思わないですよ」 消極的な意見かもしれないが、自身のキャリアを考えると正直なところだろう。
コンプラなしゆえにキャスティングで苦労することも
また、キャスティングなども担当する制作会社の社員・B氏もNetflixについて良い印象を持っていないようだ。 「Netflix作品は俳優のキャスティングでかなり苦労していると聞きます。撮影の拘束で複数の仕事をこなせなくなること、コンプライアンスや制約の少ない作品が多いのでダークな印象やアングラなイメージを持たれる可能性もある。 なので、大手の芸能事務所に所属する俳優はオファーが成立しにくい。キャスティング担当は厄介者扱いされることもあります」
海外ではストライキも!脚本家は条件面を危惧
地上波や配信ドラマを手掛ける女性脚本家・C氏は、Netflixの脚本家に対する待遇に懐疑的だ。 「アメリカや韓国では脚本家への待遇や細かい条件が整っていない時期があり、『Netflixストライキ』と呼ばれる運動が起きていた。今は改善されたようですが、脚本家を軽んじている風潮は耳にします。日本は脚本家ファーストだと聞きますが、不安に思っている作家もいるようです。 また、日本を代表する脚本家・坂元裕二さんがNetflixと複数年契約をしましたが、『クレイジークルーズ』という作品を見てガッカリしましたね。舞台のスケールが大きくなりすぎて、坂元さんの会話劇の面白さが半減しているように感じました。坂元さんの次回作に期待したいですが、大規模なNetflix作品向きの作家を見極めていくことも大事なのでは?」 このように、業界に新風を巻き起こしているNetflixではあるが、業界で働く人々は必ずしも良い印象を持っているわけではないようだ。 この先もNetflixが作り出すドラマが時代を席巻するのか。はたまたテレビ局の逆襲はあるのか。“ドラマ”さながらの刺激的な競争になることを信じたい。 <ライター/木田トウセイ> 【木田トウセイ】 テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。
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