高校野球 飛ばない低反発バット元年 絶妙なあんばいで聖地の大熱戦がファンをくぎ付けに 本塁打激減も小技や好守光る
飛ばないバットに疑念が抱かれた中でも、今夏の全国高校野球選手権大会は例年通りの盛り上がりを見せた。日本高野連は今春センバツから新基準の低反発バットを導入。故障防止の効果を発揮した中、高野連が判断した反発力低下の絶妙なあんばいが野球の魅力を光らせた。 ◇ ◇ 甲子園球場100周年に起こした高野連の改革は、野球の魅力が際立つ形となった。飛ばないバットでも沸いた聖地。高校野球ファンは熱戦にくぎ付けとなった。 今春センバツから新基準の低反発バットを導入。以前のバットの最大径67ミリ未満から、64ミリ未満と細くなり、打球部の肉厚は3ミリから4ミリ以上に定められるなどよりボールを捉えにくく、飛びにくいバットになった。打球による投手の受傷事故、打高投低による投手の肩肘の負担増加をさけるために改革を施した。 導入直後の今春センバツの大会本塁打はランニング本塁打を含めて3本。今夏は7本塁打と前年の23本から大きく減少した。木製バットを使用する選手も増加。日本高野連の古谷純一事務局長は「各校が工夫をして対策をしていただいている」と話した。 今大会は豪快な野球は影を潜めたものの、1本のアーチに沸き、小技や好守が光った。3回戦の早実-大社戦では同点の九回1死二、三塁で早実の左翼手がマウンドの三塁側真横に就く内野5人シフトで失点を防ぐなど、大胆な采配で聖地を沸かせた。外野の守備位置なども各校が工夫。全48試合中20試合が2点差以内の試合と、接戦が多くなったことも見応えが増した要因と言える。 投手のトレンドにも変化が見えた。8強入りした智弁学園のエース左腕・田近楓雅投手(3年)、防御率0・00で頂点に導いた京都国際・西村一毅投手(2年)の得意球はチェンジアップ。反発力が低下した中、タイミングをずらし、当てるだけの打撃では飛びにくい遅球に打者は苦戦した。 最速138キロの小松大谷・西川大智投手(3年)は大阪桐蔭からマダックス(球数100球以内での完封勝利)を達成。「(低反発バットは)自分にはありがたい」と大胆に攻め、高低を意識した配球が光った。150キロ超の剛腕でなくとも聖地のマウンドで輝けることを証明した。 昨年の選手権大会の総安打数は919本で今年は792本。減少したとはいえ、球児を守る対策を実施した中で極端な投高打低にはならなかった。飛ばないバットの導入にさまざまな懸念はあったものの、夏の甲子園の盛り上がりが高野連の改革の成果を象徴していた。(デイリースポーツ・北村孝紀)