「久光を引っ張っていく選手になっていくんだな」6位で終戦…涙の主将が明日を託した2人の奮闘【Vリーグ女子プレーオフ】
バレーボールVリーグ女子1部(V1)のプレーオフは2日、群馬県の高崎アリーナで5位決定戦を行い、久光スプリングスがデンソーエアリービーズにセットカウント0―3(19―25、23―25、22―25)で敗れ、6位で終戦した。レギュラーラウンド3位から日本一を目指した久光は2月24日の準々決勝(初戦)でトヨタ車体クインシーズにフルセットの末に敗れ、意地を見せたかった5位決定戦では1セットも奪えずにストレート負けを喫した。 ■久光スプリングスに入団する金蘭会高の井上未唯奈のさわやかな笑顔 久光のスターティングメンバー(第1セット)は、アウトサイドヒッターが中島咲愛(24)とマッケンジー・アダムス(32)、セッターが栄絵里香(32)、オポジットが長岡望悠(32)、ミドルブロッカーが平山詩嫣(23)と濵松明日香(25)、リベロが西村弥菜美(23)の布陣。 事実上の今季ラストゲームで「有終の勝利」を飾るどころか、終わってみれば久光の完敗だった。デンソーにはレギュラーラウンドと天皇杯・皇后杯全日本選手権を合わせて3戦3勝だった。その相手に主導権を握られ、第1セットをあえなく落とすと、第2セットは23―23から失った。後がない第3セットは2度のタイムアウトを3―7の時点で使いきり、中盤からは得点源の長岡とアダムスに代えて吉武美佳(20)と北窓絢音(19)を投入。懸命の追い上げも及ばなかった。
ラリー中のスパイクが決められず…
わずか1時間37分で決着した一戦。「モチベーション的には難しい状況だったと思うが、粘り強く戦ってくれた」。酒井新悟監督は選手をねぎらった一方で、敗因の一つに触れた。「ラリー中のスパイクがなかなか決められず、どうしても後手後手に回った」。日本代表リベロを擁する両チーム。デンソーの福留慧美に負けじと、西村も再三にわたる堅守で対抗しながら、オフェンスで決定打を繰り出せずに押し切られた。 完敗の後、キャプテンの大竹里歩(30)の目には涙があふれた。1週間前、トヨタ車体に敗れた時点で優勝の可能性が消滅。目標を見失いそうになる中、チームを奮い立たせようと「敗戦や悔しさをどう次につなげるか。もがいてでも立ち向かう」との言葉で先頭に立ってきた。それだけに「力を出せずに負けてしまうのが、今の自分たちの実力」と現実を受け入れるしかない。同じミドルブロッカーの濵松と平山をコートの外から支え続けた大竹は、涙に暮れた後に2人の若手選手の名前を挙げた。「シーズンを通して吉武だったり、きょうも北窓であったり…試合に出たときは流れを変えるプレーや思い切りのいいプレーをしてくれた。次のシーズンにつながる。そういう選手たちがどんどん久光を引っ張っていく選手になっていくんだな、と」。どんなに苦しくても、常に前向きな言動で鼓舞してきたチームリーダーは「明日の久光」を託すように、大きく、そして何度もうなずいた。 第2セットまでの2枚替えに加え、第3セットは8ー12のビハインドからコートインした吉武は劣勢を挽回しようと、ライト側から必死に右腕を振り続けた。アタックで7得点(12打数)の奮闘に、酒井監督は「ライトのスパイクの技術はまだまだこれからですが、思い切りの良さといったところで、きょうもいいスイングをたくさんしてくれた」と評価した。
再び「常勝」の冠を取り戻すために
吉武と同じく途中からコートに入った北窓も見せ場をつくった。後衛での安定したディフェンス、効果的なサーブ、そして第3セットは前衛に上がってレフト側からスパイクも決めた。この「若き両翼」の躍動が、せめてもの救いだった。 練習拠点を神戸から移して迎えた「佐賀元年」は6位で戦いを終えた。今大会を一区切りに代表選手が抜け、新たな陣容で9日からのVカップに臨む。世代交代を図る過程で味わった悔しさ。再び「常勝」の冠を取り戻すためには、歯ぎしりするような今の感情を忘れてはいけない。声をからして応援し続けたファンを思えば、誰も座して「未来」を待っていてはならない。