ネットの「炎上」、実際に書き込んでるのはたった0.5%「2万人のうち100人程度」だった…《実証研究》でわかった「炎上」に参加している人たちの「正体」
そもそも実態はあるのか。どんな奴らが書き込んでいるのか。インフルエンサーはなぜたきつけるのか。燃えた人の恐怖はいかほどか。令和の社会現象「炎上」のすべてを徹底取材で明かす。 【一覧】エッ、これって現実の出来事? 令和に起きたヤバすぎる「炎上事件簿」
ネット上の「評判」で人生を左右される時代
元タレントの木下優樹菜はトラブルになったタピオカ店に恫喝メッセージを送ったとして活動自粛('19年)、名古屋市長だった河村たかしは金メダルをかじって謝罪('21年)、タレントのフワちゃんは今年8月、芸人・やす子に対し「死んでくださーい」とSNS上で投稿して活動休止を発表……。 '00年代に2ちゃんねるなどの匿名掲示板から始まったと言われる「炎上」は、スマホの登場やSNSの発達により年々増加している。 総務省の「情報通信白書」によると、炎上は〈ウェブ上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態〉と定義される。炎上のデータ集積を行う「デジタル・クライシス総合研究所」によると、特定の個人や企業に対する非難や批判の投稿が100件以上集まった事例は、昨年だけで約1600件も発生したという。これは、1日に4件近い炎上が起きている計算だ。 もはや現代の社会現象とも言え、誰もが毎日のように大小さまざまな炎上を目撃している。だが同時に、こんな疑問を持ったことはないだろうか。炎上を見聞きしたことはあるが、周囲で過激な投稿をしている人は聞いたことがない。炎上させているのは、いったい誰なのか――。
ネットは極端な人だらけ
「まず理解しておいたほうがいいのは、ネットが『能動的な発信』だけで構成された極めて特殊な言論空間であるということです。誰に止められることなくひたすら自分の意見だけを発信できるネットは、極端な意見を持ち、それが正しいと信じている人にとっては天国のような場所です。 一方で、常識的で中庸的な人は攻撃されることを恐れ投稿や書き込みをしなくなっている。結果、『極端な人』だけが意見を発信し続けるという状況になっているのです」 そう語るのは、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授。日本で初めて実証的なデータを用いた、「炎上研究」の第一人者である。 山口氏はこれまでに総勢6万人にアンケート調査を実施。下の図は、20~60代の男女を対象に「憲法改正」についての意見を聞き、分析したものだ。「ネット上には極端な人が溢れている」という山口氏の言葉通り、一般社会では「どちらともいえない」が多いにもかかわらず、SNS上では「非常に賛成」「絶対に反対」という極端な意見が半数程度を占めていた。