「車のエンジンオイル交換」を店任せにする人の末路、専門家が教える「適切な交換時期」
● ディーラーやカー用品店の煽り商法 不安マーケティングにご用心 ディーラーやカー用品店、ガソリンスタンドなどが煽るのは、ビジネスモデルとしては古典的な手法の「不安マーケティング」そのものです。別の例で言うならば、「若いうちから肌や頭皮をケアしておかないと、中年になってから取り返しのつかないことになりますよ……」というのと同じです。 一方で、雑誌やネット記事も、短い距離や期間での交換を薦めてきます。オイル交換は早めに行ったからといって、クルマに悪影響を及ぼすことはありません。だから書く側からすると、メーカーが推奨する距離や期間より短く紹介しておけば、無難なのです。長めの距離や期間を紹介して、問題が起きて責任が生じるより、ずっと良いわけです。 加えて、クルマ好きならば早めにオイル交換をしてクルマをいたわり、大切にすることが当たり前というような風潮があります。オイル交換を先延ばしにしていると、友人らから白い目で見られるケースもあるようです。周囲にバカにされたくないという気持ちから、オイル交換してしまう実態はまさに、同調圧力が掛かっている状態と言っていいでしょう。 SNSや動画の影響もありそうです。オイル交換を先延ばしにしたエンジンの内部を紹介する動画や画像を、見かける機会が増えています。が、よくよく考えてみてください。そうした動画をアップしているのは自動車整備工場や整備士のチャンネルが多く、画像が紹介されているのはカー用品店やガソリンスタンド、いずれもオイル交換をすることで利益を得られる側ばかりです。 繰り返しになりますが、適切なオイル交換時期はメーカーが指定する距離もしくは期間です。 しかし、これらの指定よりも短い距離や期間でオイル交換をしたほうが良いケースもあります。
● 「シビアコンディション」も 定義は結局あいまい…… それが、「シビアコンディション」と呼ばれるものです。高速道路走行が多い、あるいは逆に低速走行が多い、1回の走行距離が短い、ホコリっぽい環境で使っているなどを指します。こうしたシビアコンディションでクルマを使う場合は、指定の半分の距離や期間でオイルを交換すること、と自動車メーカーは定義しています。 とはいえ、ザックリしているというか、ボンヤリとしているというか……。高速道路走行が多いというのは、具体的にどれくらいの比率だと多いのか、ホコリっぽいとはどういう状態を指すのかは、明記されていません。そうなると結局、「念のため……」と、早めのオイル交換をすることになりがちです。 また、オイルは劣化具合を目視で確認できない点も、早め交換のきっかけになっています。オイル交換をしたからといって、すべてのオイルが入れ替わるわけではなく、新しく入れたオイルはエンジン内部に残った汚れたオイルと混ざり合います。その時点である程度汚れますし、エンジンを始動してオイルが各部に行き渡ればさらにオイルは汚れます。 オイル交換をして1000kmも走れば、オイルはかなり黒くなり汚れた状態となります。もう見た目は十分に劣化していますが、普通の使い方であればこれで不具合が起きるほどの劣化ではありません。タイヤのように明らかに山が減って溝が浅くなっているなどといった、明確な劣化が確認できないので、どうしても早め交換になってしまいがちです。 本来、論理的に行われるべきオイル交換ですが、そこに感情論が入り込んで早め交換が美徳となっている点が、筆者は何だか気持ち悪いのです。必要以上の早め交換は、経済的負担が増すだけでなく、廃油の量が増えるので環境への負荷が大きくなります。読者はぜひ冷静になって、賢いオイル交換を心がけてください。 最後に、自分でオイルの点検をする際のポイントを書いておきます。オイル交換の後は、自分の駐車場など決まった場所でオイルの量を確認しましょう。(きちんとした)整備工場では平らな場所でオイルの量を確認しますが、駐車場などには傾斜があります。このため、クルマが傾きオイルレベルゲージで付くオイルの量が変わってきます。オイル交換後にいつもの場所でオイル量のチェックをすれば、平らな場所といつもの場所での差が判明します。できれば整備工場でレベルゲージにどれくらいオイルが付くか確認しておくことで、いつもの場所との差が把握できます。 少ないオイルも問題ですが、多いオイルはさらに問題です。過大な量のオイルはエンジンに負担をかけます。レベルゲージの上限よりも多くオイルが入っている時は、レベルゲージ内に収まるように調整してもらいましょう。 オイルの劣化具合を目視でチェックするのは困難です。ただし、オイルは新品では透明感のある飴色、使用するにしたがって黒くなります。もし、これがカフェラテのような色になっていたら、それは多くの水分が混入している可能性がありますので、オイル交換だけでなく水分混入の原因追求を整備工場に依頼しましょう。
諸星陽一