【セルジオ越後】細谷のゴールが認められていれば?“たられば”はいくらでも言える。スペインに実力差を見せつけられて完敗。それがすべてだ【パリ五輪】
10人の相手にしか圧勝できなかったのが事実
パリ五輪の準々決勝で、U-23日本代表がU-23スペイン代表と対戦。0-3の完敗で、ベスト8で敗退した。 【画像】U-23日本代表のスペイン戦出場15選手&監督の採点・寸評。攻守で存在感の高井、“幻ゴール”の細谷も評価 日本は11分に先制された後、相手がリードして暑さ対策で引くようになったためか、チャンスを作り出せた。40分には細谷が見事な反転シュートでネットを揺らした。だが、これはVARチェックの末、オフサイドの判定となった。 後半に入って日本は2失点。実力でスペインの方が上回っていたと認めざるを得ないね。相手はキーパーとセンターバックもダイレクトパスを見せるなどボール回しが巧みで、日本のプレスを難なくかわしていた。パスの質、トラップの技術、ポジショニング、攻守の切り替えの早さで、日本よりもはるかに上だった。 決定力でも差を見せつけられた。2得点のフェルミン・ロペスは、まだ21歳なのに、あれだけ質の高いゴールを決められる。彼はバルセロナで活躍している選手だ。久保や鈴木唯人を招集できなかった日本とは対照的で、協会の組織としての力の差も感じてしまったね。 日本はA代表も含め、近年の世界大会では決勝トーナメントでなかなか勝ち上がれていない。グループステージと違う戦いになるなかで、相手との差が出てしまうケースが多い。 今回もそうだった。細谷は奮闘していたけど、なかなか他の選手が輝けない。理由は明らかで、ノックアウトステージに入って相手のレベルが上がったためだ。 今大会を冷静に振り返ると、グループステージの初戦パラグアイ戦では、前半のうちに相手に退場者が出て数的優位になり5-0で圧勝した。でも続くマリ戦、イスラエル戦はともに1-0の辛勝。しかも、相手のPK失敗や、シュートがゴールポストに救われる幸運もあった。 グループステージを首位通過して「日本は強くなった」と称えられたけど、本当にそうだったのか。スペイン戦で「細谷のゴールが認められていれば」「細谷のシュートのポスト直撃や、高井のヘディングのバー直撃が入っていれば」と慰めるのは簡単だ。 “たられば”はいくらでも言える。圧勝できたのは相手が10人になったパラグアイ戦だけ。その事実を忘れてはいけないし、反省しなければ次に活きないよ。 話は少しそれるけど、今大会はサッカーに限らず、バスケットボールやバレーボールといった球技の団体種目で日本は苦戦が続いている。もちろん、勝敗には様々な背景があるのだろうけど、以前から言っているように、練習法や指導法よりも、根本にあるのは“補欠”が多いその環境ではないだろうか。 部活動ではスタンドで必死に応援する補欠部員が美談として取り上げられるケースもあるけど、厳しい言い方をすれば、試合に出られない部員は、学校に行って授業を受けられないようなものだ。それでは全体の底上げにはつながっていかないし、キラリと光る原石を見落とすことにもなりかねない。 日本が多くの種目で世界に追いつき、選手たちが大舞台で活躍できるように、いろいろな観点からスポーツ界が一丸になって議論してほしいね。 【著者プロフィール】 セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、79歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。
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