<スタンフォードから見たニッポン>百聞は一見に如かず 若者たちよ、もっと外の世界で勝負しよう!
良好な日米関係には相互理解が欠かせない。そのためには何が必要か。スタンフォード大学を訪ね、筒井清輝教授と同大アジア太平洋研究センターで客員研究員も務めた山本康正氏に話を聞いた。 編集部(以下、──)米国の大学で日本研究者が減少していると聞きます。 筒井 米国では近年、中国に対する関心・警戒感が高まる一方で日本研究者が減少しています。日本に関する言説は日本研究者によって形作られ、米国の世論形成にも大きな影響を与えます。1979年に『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を著したハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル氏や日本・東アジア政治に詳しいジェラルド・カーティス氏やスーザン・ファー氏のような社会科学者の客観的知見は、日本に対する偏見や不正確な見解の広がりを低減し、日本に対する正しい理解を広める力にもなります。 ──日本の国力が低下する中、日本に興味を持つ学生はいるのでしょうか。 筒井 若者たちが日本に関心を持つ機会は、マンガや『Godzilla(ゴジラ)』などの映画、ゲーム、神社仏閣などさまざまで、そこから日本語を学びたい、日本の政治・経済・社会・文化などをもっと学びたいという学生は私の肌感覚としても確実に増えています。その意味で、「入り口」があることがとても大事で、日本研究者になろうと思っている社会科学者の「金の卵」をどう養成していくかが問われています。 問題は、日本研究者を志して大学院で博士号を取得しても、教授ポストなどがなく、日本研究者になることを諦める人が少なくないことです。シンクタンクで活躍する人もいて素晴らしいのですが、大学院生を直接指導しないので、後進の育成、次世代の日本研究者が育ちにくい課題があります。 スタンフォード大学では、1983年にアジア太平洋研究センター(APARC)を立ち上げ、教授やシニアフェローを数多く採用し、フリーマン・スポグリ・インスティチュートというスタンフォードでの国際関係研究のハブの中で、アジアに焦点を当てた研究を進めています。『歴史の終わり』、『侵食される民主主義』などの著書があるフランシス・フクヤマ氏やラリー・ダイアモンド氏もシニアフェローとして研究、発信、教育に活躍しています。