藤川球児新監督「力のないベテランは必要ない」その知られざる真意とは…盟友・下柳剛が明かした「男の覚悟」
球団史上初の連覇を惜しくも逃す結果となった阪神タイガースの新たな挑戦はすでに始まっている。藤川球児氏を新監督に迎えた来季の阪神の戦い方を、ともに阪神でプレーした野球評論家・下柳剛氏が分析。自身の経験と照らし合わせた臨場感ある解説は阪神ファンならずとも必読だ。 【一覧】プロ野球「最も愛された監督ランキング30」最下位は、まさかの…
ケイの荒れ球がハマった
2024年シーズンの日本プロ野球は、横浜DeNAベイスターズの日本一で幕を閉じた。1998年以来26年ぶりの日本一。セ・リーグ3位からCSを勝ち上がっての下剋上だった。 三浦監督はシーズン中の野球を貫いた。バントをほとんどせず、選手はシーズン通りのびのびとやれたんじゃないだろうか。最初は福岡ソフトバンクホークスが2連勝して圧倒するかと思ったけど、3戦目に先発した東のピッチングでガラッと流れが変わった。そして4戦目に先発して7回無失点に抑えたケイ。この2人の左腕が日本一を手繰り寄せたといっていい。 ケイは今シーズン24試合投げて6勝9敗、防御率3.42。決して好投を続けていたわけではなかった。ただ、適度に荒れて適当にストライクが入るタイプだから相手からしたら的が絞れない。それがソフトバンクの左打者に奏功した。 考えてみれば柳田、近藤、栗原、周東、牧原などソフトバンクには左の強打者、巧打者が多い。右も山川、今宮、甲斐などがいるけど、長打を警戒するのは山川くらい。そう考えると、左ピッチャーに対して弱さがあった感じもする。そこにケイの荒れ球がハマった。この日本シリーズを見たパ・リーグの各チームは、来シーズン、ソフトバンク戦ではより多く、左腕のローテーションを組んでくるだろう。
指笛を鳴らしたファンを怒鳴りつけた過去
東が先発した第3戦ではファンによる指笛で中断する一幕もあった。6回1死1塁の場面で試合が中断し、注意喚起のアナウンスが2回流れた。その様子を見ていたソフトバンクベンチが大笑いしていたことが話題になったけど、この様子を見ていて個人的には過去の一件が脳裏に蘇った。それは1998年、当時まだダイエーだったホークスに起きたスパイ疑惑。「相手キャッチャーのサインを観客席から伝達していたのではないか」という疑惑だった。 そんな過去の出来事がソフトバンクのベンチにアレルギー反応を起こさせたか、選手たちになにか特別な意識を生じさせたか。現に、この時から第6戦の3回まで無得点だったわけだから。振り返るとそんな考えも浮かんでくるくらい、ガラッと潮目が変わった。 実際、投げる瞬間の指笛は、そりゃ気になる。自分にも経験がある。日本ハム時代、投げる瞬間に鳴らされて「あっ」と気が抜けた瞬間ホームランを打たれた。 その時は観客も少なく、誰が指笛を吹いていたか分かったので、回が終わった時にベンチに戻らずバックネットに怒鳴りつけに行った。すぐ小笠原(道大)と当時ピッチングコーチだった森(繁和)さんにベルトをつかまれ、ベンチまで引きずられていったけど(笑)。ピッチャーは集中して投げてるから、外部の音に敏感になる。この手のトラブルは昔からあった。 なんにせよ、DeNAはクライマックス・シリーズからどんどん強くなっていった。みんながみんなで自信をつけていく様は、高校野球を見ているようだった。そう、DeNAに日本一への勢いをつけたのは阪神だ。リーグ戦では広島の9月の大失速がDeNAを3位に押し上げたわけだけど、CSでDeNAに連敗して勢いづかせたのは阪神だったことを忘れちゃいけない。