6000万円超え! いすゞ新型「“精悍” エルガEV」がスゴかった! 70人乗りで画期的な「段差ゼロ」&340馬力の“静音ユニット”搭載! どんな特徴がある?
パット見“フツー”に見えるが… 実は「超画期的」だった
ここで、「ノンステップバスって珍しいの?日本各地でごくふつうに走っているよね?」と思うかもしれません。 しかし実は、現在走っている多くのノンステップバスが、車体中央付近にある中扉から後ろの床を高くした「前中ノンステップ(部分超低床車)タイプ」です。いわゆるフルフラットタイプではないのです。
ノンステップバスは、本来なら車内の奥(後端)まで床に段差がないフルフラットタイプが望まれます。 そのため、ノンステップバス黎明期だった1990年代後半に、いすゞ・日野・三菱ふそう・日産ディーゼル(現:UDトラックス)の4社は、いずれもフルフラットのノンステップバスを発売していました。 ところがフルフラットタイプのバスには、いくつか問題点がありました。 路線バスの後輪と、それを収めるタイヤハウスは巨大です。 床が高かったツーステップバスでは張り出し量は小さめだったのですが、床を大きく下げたノンステップバスでは、車内に大きく張り出すことになりました。 とはいえ座席は設けねばならず、各社は設計に苦慮。 タイヤハウス上に後ろ向きシートを設けるなど工夫を行いましたが、「シートに座るためによじ登る」感覚もあり、使い勝手は決して良好と言えませんでした。座席配置に自由度がないため、座席数も減少していました。 エンジンの搭載に関してもデメリットがあったのです。 床下に納められないエンジンは、特殊な横向き配置にして車体最後部に押し込める方法としたため、新設計部品が多くなり、従来のバスとの共用化も難しくなって製造コストが上昇。 さらにエンジン収納スペースも狭いため、高出力エンジンの搭載が難しく、一方で車体後部の領域の多くをエンジン収納に充てていたため、車内の空間も少なくなりました。 このようにフルフラットタイプは定員が少なく車内も狭いため、ラッシュ時の運行を避けたバス事業者もあったといいます。 これらの理由から、ノンステップバスの主力は前中ノンステップタイプに移行しました。 前中ノンステップタイプでは、車体後半の床が高いためタイヤハウスとの段差も少なく座席数も確保が可能で、車体後半を従来のバスと共通化できるためコストも抑制、メンテナンスも容易というメリットがありました。 そのため、フルフラットタイプは短期間で衰退してしまったのでした。 いすゞでも、エルガの前身「キュービック」時代にフルフラットタイプの「LV832系」を開発。エルガが2000年にデビューした際には、前中ノンステップタイプの「type-A」のほか、LV832系の構造を踏襲したフルフラットタイプ「type-B」(LV834系)を用意しました。 しかしフルフラットタイプのLV834系は2005年に製造を終了。以降は、前中ノンステップタイプの「type-A」が作られるようになりました。 その観点から見ると、エルガEVは国産フルフラットノンステップバスの復活を果たした重要なモデルであり、「エルガ type-B」の後継車種と言えることもできます。 エルガEVでは、すべての座席がフラットなフロアからそのままアクセスできるようになるなど、かつてのフルフラットタイプの欠点も払拭していることも注目です。 ※ ※ ※ エルガEVは当初定員70人の「都市型」のみが発表・発売されましたが、2024年10月に中長距離路線用に座席数を増やした「郊外I型」「郊外II型」の発売も開始しています。 今後、日本各地でその勇姿を見る機会が増えていくことでしょう。
遠藤イヅル