特集【キャッチ】「俺、送っていきます」親と暮らせなくなった子どもの居場所「土井ホーム」もう一つの家族として支え合う 北九州市
未来を担う子どもたちを守りたいと、土井さんは20代の頃、親と暮らせない子どもを受け入れ始めました。ただ、大きな課題に直面します。 ■土井 施設長 「児童相談所から預かってきた時に、虐待の後遺症が非常に激しいなと思って。これをどう理解していくかを研究しないと、この子たちを経験値だけで対処できないと。」
そこで、49歳の時に大学院に入学し、児童福祉を学んで博士号を取得しました。そして、専門的な知識とともに育てる「治療的里親」と呼ばれるようになりました。これまで支援した子どもは200人以上に上ります。
■職員 「おはよう。気分は悪くない?」 ■子ども 「はい。普通は4時とかに目が覚めるのに、きょうは6時だった。」 「土井ホーム」では、毎朝6時半に起きるとゴミ出しや洗濯物を干すなど、お手伝いをするのが約束です。家庭での生活スキルを身につけさせ、自立につなげる狙いです。 ■優人さん(仮名) 「(来た時からできた?)ノーです。来た当時は『そこじゃない』『どこ干してるの』とずっと言われていた。」 ■職員 「自分たちが独立した時に、なんでもできるようになっておかないとね。」
まもなく学校に行く時間、職員の女性が、ある子どもの部屋の前に向かいました。 ■職員 「ちょっと開けていい?」 1人の子どもが、学校に行くのを渋っていました。「土井ホーム」の子どもが学校を休んだり、体調不良で早退したりするのは珍しいことではありません。土井さんは、かつての「心の傷」が影響しているのではと考えています。 ■優人さん(仮名) 「俺、送っていきます。」 優人さんが進んで、学校まで送ってくれることになりました。 ■優人さん(仮名) 「俺のこと気にせんでいいけんね、いつも間に合うけん。リラックスよ、リラックス。」 励まし続ける優人さんの姿は“お兄さん”そのものです。互いに支え合う大切さを、ゆっくりと学んでいく子どもたち。 ■土井 施設長 「どんなにいい言葉をかけても、ある程度の時間をおいてあげないと。心の中で熟成の時間が必要。問題を解決するということに一生懸命にならずに、ある時間を一緒に伴走してやるという気持ちが大事かな。」
今、土井さんが力を入れているのが地域との交流です。2023年から始めた「子ども食堂」では、地元の子や高齢者も参加し、この日はみんなでカレーライスを食べました。 ■優人さん(仮名) 「こういう機会もありなんじゃない。楽しいじゃないですか。いろんな人と食べて笑い合って話し合って、楽しくできるから。」 ご飯を食べたら、一緒に射的をしたり、けん玉の回数を競いあったり。みんな自然と笑顔がこぼれます。 親と暮らせなくなった子どもたち。「土井ホーム」はもう一つの家族として、そんな子どもたちの居場所を用意しています。 ※FBS福岡放送めんたいワイド2024年10月30日午後5時すぎ放送