インド洋大津波から20年…被害を衛星電話でジャカルタに伝えたラジオ放送責任者「気の緩み気がかり」
【バンダアチェ(インドネシア・スマトラ島北部)=作田総輝】約23万人が犠牲になった2004年のインド洋大津波から20年となった26日、最大の被害が出たインドネシア・アチェ州の州都バンダアチェなど世界各地で追悼式典が開かれ、遺族らが犠牲者の冥福(めいふく)を祈った。
バンダアチェの式典は、中心部のモスク(イスラム教礼拝所)で行われた。津波によるけがで片脚を失い、映画のモデルにもなったデリサ・フィトリ・ラフマダニさん(27)が壇上に立ち、「過去の経験は貴重な教訓になる。未来をより良いものにすることは私たちの責任だ」と呼びかけた。
会場には、追悼式典の様子を生放送するインドネシア公共ラジオ放送「RRI」のバンダアチェ放送局でニュース部門の責任者を務めるトゥク・ハリス・ファディラさん(54)の姿もあった。
ファディラさんは津波の発生当初、被害情報を衛星電話でいち早く首都ジャカルタの放送局に伝えた人物だ。その後も自身が担当するラジオ番組で、津波に関する啓発メッセージを定期的に流すなど、災害による被害を最小限に抑える減災活動に力を入れてきた。
式典を見守り、「破壊的な日から20年がたち、復興は進んだものの、多くの人がまだ悲しみの中にいることを実感した」という。その一方で、「住民の気の緩みが気がかりだ」とも話す。
節目の20年を迎えたことで、津波被害への関心が再び高まっており、ファディラさんは「これを機に一層、減災プログラムを発信していきたい」と誓った。
インド洋大津波は04年12月26日、スマトラ島沖で起きたマグニチュード(M)9・1の地震に伴い発生。約16万7000人が死亡・行方不明となったインドネシアのほか、タイ、インド、スリランカ、アフリカ東部ソマリアなどにも大きな被害をもたらした。