「太ると病気になる」という不安が招く深刻な弊害、幸福感を犠牲にした食生活では健康になれない
しかし、近年では、食物繊維がさかんに研究され、私たちの健康の重要なカギを握っていることがわかってきました。 「栄養にならない」「不要なもの」といった評価は今やガラリと変わり、「第6の栄養素」といわれる地位にまで格上げされました。 この食物繊維は私たちの健康をつかさどる腸内環境を維持するために重要な働きをしているのです。つまり、炭水化物を充分に摂らないと、腸内環境が悪化し、さまざまな不健康を呼び込むことにもなるのです。
極端な糖質制限ダイエットがもてはやされたりすることからも、日本人は、太ることに異常なまでの恐怖心を持っている気がします。 これがスタイルや見た目を気にする若い女性であれば、まだその心理は理解できるのですが、高齢者にも「太ってはいけない」という観念がとても強く、自ら食べる量を減らしてしまう傾向がみられます。 高齢者の多くが肥満に対する恐怖心を植え付けられた理由には、国の健康政策の影響があります。2000年に厚生労働省は『健康日本21』を策定しました。
以降、「生活習慣病(メタボリックシンドローム)に気をつけましょう」と、生活習慣病への注意喚起をいたるところから耳にするようになりました。 たとえば、スーパーに行けば中性脂肪を減らす商品がズラリと並び、テレビの健康番組や雑誌などでは「肥満」による生活習慣病のリスクや恐怖がつねに語られるようになりました。 私たちはそうやって約20年もの間、「太ったら病気になる、長生きできないぞ」という言葉のシャワーを浴び続けてきたわけです。
何度も繰り返すようですが、日本人の多くがエネルギー不足に陥っているのです。日々、必要とされるエネルギーを毎日の食事からしっかり摂取できていないのです。 とりわけ、高齢になると自然に食が細くなりますから、むしろ「やせ」が問題になります。さらに栄養が摂れなくなってしまうので、とても危険です。それが「フレイル」です。 フレイルとは、肉体的・精神的に「虚弱」になる状態を指します。肉体的には筋肉が減り(サルコペニア)、それによって筋力や運動能力が低下してしまうのです。食べ物はからだを作り上げる材料です。加齢により減り続ける筋肉も、食べて、からだを動かすことで作られます。