『龍が如く8外伝 パイレーツ イン ハワイ』横山氏・阪本氏・堀井氏インタビュー。真島吾朗+ホノルルだからこそ実現できた、新たなアクションへの挑戦【TGS2024】
2025年2月28日発売予定の『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』(パイレーツ イン ハワイ。以下、龍が如く8外伝)。2024年9月26~29日にわたって開催された東京ゲームショウ2024(TGS2024)のセガブースでは、本作の体験版の試遊のほかステージイベントも行われ、多くのゲームファンの注目を集めていた。 【記事の画像(8枚)を見る】 そのTGS2024の会場にて、“龍が如くスタジオ”代表・横山昌義氏、チーフプロデューサー・阪本寛之氏、プロデューサー・堀井亮祐氏にインタビュー。おもに体験版で明らかになった要素についてお話をうかがった。 横山昌義(よこやままさよし): “龍が如くスタジオ”代表。文中は横山。 阪本寛之(さかもとひろゆき): 『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』チーフプロデューサー。文中は阪本。 堀井亮祐(ほりいりょうすけ): 『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』プロデューサー。TGS2024の舞台では“Ryo”として熱唱を披露し、写真はその際のメイク時のもの。文中は堀井。 ゲームのオープニングはミュージカルとして展開! ――TGS2024を経て、『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』の存在感がより増した印象です。ファンの間でもさまざまな反響が飛び交っている最中ですが、開発チームとしての手ごたえはいかがですか?: 横山: TGSでのミュージカルステージもそうですが、いままでのシリーズ作品と毛色が違いすぎて、スピンオフやファンタジー作品だと思っている人も少なくない印象です。現段階で出していない重要な情報もあるので、この作品のイメージが正しく伝わるのは、まだまだこれからというところでしょうか。 ――TGSではミュージカルステージを拝見しましたが、ゲーム内のミュージカルシーンも含めてとても楽しめました。 横山: ありがとうございます。今回、ゲーム内外のミュージカル部分は、著名な演出家・振付師であるKAKETAKUさん(※)にお願いして、構成からカメラワークまでしっかりと組んでもらっています。 ※KAKETAKU氏:RUUTEE株式会社代表。演出家や振付師以外にも、歌手やダンス、動画クリエイターなどさまざまな活動を精力的に行っている。その活躍は国内だけでなく海外にも及び、公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@kaketakujapan)は登録者数が129万人。 ――そうなんですね! あのすばらしいクオリティにも納得です。ちなみに本作の開発において“ミュージカルをやろう”と決めたのはいつごろでしょうか?: 横山: じつは、発想の段階から「オープニングシーンでミュージカルやりたい」という思いがあり、「真島を助けた少年ノアというキャラクターなら、ミュージカルもこなせるんじゃないか」と考えていました。 ――以前のインタビューで、「挑戦的な演出を盛り込むために、キャスティングは王道にした」とお話されていました。つまり、ファーストサマーウイカさんには、ノアがミュージカルで歌うことを前提にオファーをされたということでしょうか? 横山: そうです。そういう意味で、今回は“我々がキャストのことを深く知ること”の大切さを改めて感じたゲーム開発でもありました。キャストのみなさんが“何を得意としているか”、“どういった強みを持っているのか”。それらを熟知することで、初めて我々はゲームのアイデアとのベストな組み合わせを見出せるようになります。 外伝とはいえ今回のような大規模な企画を、これほどのスピード感で実現できたのは、まさに“我々のアイデアを実現できると確信している人でキャスティングを固めることができたから”にほかなりません。そして、我々がこういう作り方ができるのは、20年間人とのつながりを最重視してきた『龍が如く』シリーズだからこそだと思っています。 ※写真はRGG SUMMIT 2024より ――それを裏付けるように、ウイカさんの歌声はすばらしかったです! ちなみに、堀井さんは人気プレイスポットであるカラオケにおいて、多くの歌の作詞を担当されていますが、今回のミュージカルにも関わられているのでしょうか?: 堀井: はい。ミュージカルの楽曲についても、僕を含めたいつものカラオケ制作メンバーで作っています。 横山: じつは今回のミュージカル曲の最初のデモでは、堀井がアカペラで歌っていたのですが、その時点ではまったく完成イメージがわかなくて(笑)。ただ、その段階で歌自体はほとんど完成していたので、さらに然るべき方々の協力を経て、あのミュージカルが完成しました。 ――会場にいた観客のみなさんも大盛り上がりでした。 横山: 会場で最初に観たときは、これまでの苦労の積み重ねがフラッシュバックして泣けましたね。 ――会場で公開されたゲーム内のミュージカルシーンは、実際の本編のオープニングで流れるのでしょうか。 堀井: はい、そうです。また歌としては、プレイスポットとしてのカラオケにも、真島の新曲を含めてたくさんの歌を用意しているので、そちらも期待していただけるとうれしいです。 シリーズではじめて“ジャンプ”を採用した理由は? ――続いて、試遊で体験できたバトルについておうかがいします。今回の真島は、狂犬とバイレーツというふたつのバトルスタイルで戦いますが、それぞれのコンセプトをお聞かせください。 堀井: 狂犬スタイルは、プレイヤーのみなさんに「これが真島だよな」と感じてもらえるものを目指しています。拳とドスの両方が組み合わさって展開するケンカアクションを想定していて、近年の真島を象徴する分身攻撃も繰り出せます。全体的にスピーディなアクションが楽しめるスタイルになっています。 ――分身が自律行動してバラバラの相手を攻撃できたのはおもしろかったです(笑)。 堀井: 今回の体験版は、あくまでTGS用のおもしろさ重視なバージョンです(笑)。でもちょっと強すぎたので製品版で少し調整が入るとは思います。 ――パイレーツのほうはいかがでしょうか?: 堀井: パイレーツは、狂犬の対となるバトルスタイルとして開発を進めています。おもに、斬撃による広範囲攻撃の気持ちよさや、『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下、龍が如く7外伝)にあったガジェット的なエッセンスも含んでいますね。というのも、海賊はやはり一団をなすものですので、本作はこれまでの作品よりも集団戦が多くなっています。そういったシチュエーションで爽快感を味わえるスタイルを目指して調整をしているところです。そのうえで、こちらも「真島っぽいね」と思ってもらえることを重視しています。 阪本: 『龍が如く7外伝』にあったバトルスタイルのエージェントから、さらに進化していると思っていただければ。あちらは、“ひとつのコンボを打ち終わったあと、一拍置いてから再度コンボを始める”といった部分が少しだけ残っていました。ですが、真島のパイレーツスタイルはどんどんアクションがつながっていくようになっていて、技の終わりをできるだけ感じさせないように意識しています。 ――たしかに、カトラスを投擲して戻って来るまでのあいだも、拳での攻撃を続けられました。: 阪本: ボタンを押すたびにコンボが変わっていって、自分なりの気持ちいいコンボを作っていけるものを目指しています。 ――本作のバトルでは、基本操作として“ジャンプ”が使えるのがとても新鮮でした。アクション面では、ここが過去作品とのもっとも大きな変更点になると思いますが、どういった意図でジャンプの採用に踏み切ったのでしょうか? 阪本: これだけ長い間アクションゲームを作っているわけですから、ジャンプの採用については過去に何度も議題に挙がりました。ただ、主人公の性質や舞台の地形との兼ね合い、そもそも“アクション映えを意識するとリアリティを大きく損なう”といった解決しなければならない要素も多く、これまで採用には至らなかったというのが実情です。 横山: 格闘技を思い浮かべるとわかりやすいのですが、戦いにおいてジャンプという行動は不合理の塊なんですね。ゲームとしてジャンプに意味を持たせるためには、無敵時間を作ったり、行動を保証したりしてリアリティとは真逆を進まざるを得ないわけです。 阪本: ですが、今回は真島が主人公ということで、いままで積み上げてきたバトルスタイルや、ホノルルシティという大きな舞台を駆使したダイナミックなバトルの追求など、彼らしいアクションの最先端を考えたときに、「真島ならばジャンプを採用しても大丈夫だろう」と考えました。このホノルルシティの広さと真島のキャラクター性が組み合わされば、ジャンプを使った三次元的なコンバットシーンが映えると思ったのです。 ――ジャンプを絡めることで複雑なコンボルートも組み立てられそうですし、これまでにないやりごたえが生まれそうです。: 阪本: 試遊版では解禁されていないアクションもまだまだたくさんあります。もちろん、コンボの派生ルートもいつも以上に用意しているので楽しみにしていてください。 ――すでにワクワクしています(笑)。なおジャンプ以外にも、本作には全体的に派手なアクションが多い印象です。 横山: それには、本作特有の理由がありまして。というのも、ホノルルシティでいつものようなアクションのバトルを始めると、フィールドのあまりの広さにバトル中の“間”がもたなかったのです。神室町や蒼天堀、伊勢佐木異人町いった街でのバトルは、周囲に壁があるケースがほとんどで、広い場所でもせいぜい10メートルほど。基本的には閉所でのバトルになるので、敵が少数の場合でも遊んでいて間延びした印象を与えずに済みました。ですが、ハワイの広大なフィールドにおいては、リアルなバトルアクションが噛み合わなかったのです。 一方、前作『龍が如く8』はゲームジャンルがRPGということで、バトルに参加するキャラクター数が多く、発生するエフェクトも派手でした。また、戦う相手も人間離れした見た目をしていても許容されるゲームシステムということもあり、あの広さでも違和感は覚えなかったと思います。 ――なるほど。ジャンプの採用はそれを解消するため、という側面もあるのですね。 横山: そういう背景もあって、分身攻撃やパイレーツスタイルのカトラスを使った連撃といった、派手なアクションを取り入れた形です。 阪本: ほかには、おなじみの回避行動であるスウェイも、本作では移動距離がシリーズ最長になっています。 ――試遊版は、ある程度真島が強くなっている状態だと思いますが、実際のプレイではどういった成長システムになるのでしょうか? 堀井: みなさんが想像するような、ゲーム進行に合わせて真島を成長させていく要素だけでなく、今回は真島が記憶喪失の状態でスタートするので、記憶を取り戻すことで技を思い出すといった感覚を味わえる作りにもなっています。イメージとしては、最初から爽快なバトルが楽しめるという前提がありつつ、成長するにつれて新たなコンボの派生が増えていくなど、さまざまな要素が絡み合って気持ちよさがどんどん広がっていく感じですね。 ――バトル関係のシステムとして気になった要素として、本作は“指輪”という独立した装備カテゴリーが登場しています。これはどういった意図で採用したものなのでしょうか? 堀井: まず本作には真島の服装を自由に変更できるコーディネートシステムが実装されています。しかし、その服装にバトル関係の能力値を付与してしまうと、それが足かせになって自由なコーディネートを楽しめません。そこで、新たに“指輪”という装備カテゴリーを用意して、バトル関係の能力値はここに集約させました。こうすることで、みなさんが自分の好みに合わせた服装を選べるようにしたかったんです。 ――装備枠がかなり多かった気がするのですが、もしかして10本の指全部に装備できるのでしょうか? 堀井: そうです。ただ、親指用の指輪など、装備枠が限定されているものもあるので、いろいろ試して強い組み合わせを見つけてもらえればと。 ――コーディネートについては、試遊版でもかなりの種類の服装が用意されてて驚きました。しかも、トラのゴローにも着替えがあるんですね。: 堀井: 今回、コーディネートには200種類以上のアイテムを用意しているので、みなさんならではの一張羅を着せてあげてください。ゴローは、せっかくなのでこちらも出来る範囲でコーディネートを用意しました(笑)。 ――ほかにも試遊では、マッドランティスで賞金首と戦うことができました。こちらはどういったシステムでしょうか? 堀井: やはり海賊といえばDEAD or ALIVEな賞金首は欠かせないだろう、ということで(笑)。いろいろなところに潜んでいる強敵を倒すことで賞金を獲得し、それを使って真島を成長させる……といったゲームサイクルになっています。 ――敵を倒すとお金が手に入るということは、お金の使い道は多いのでしょうか?: 堀井: そうですね。海賊が2ドル3セントで買い物を……なんて夢がないじゃなですか。海賊として名が売れてくれば、大金を使って相応の楽しみを味わえるようになっています。 ――海賊といえば、試遊版ではマッドランティスの“パイレーツコロシアム”が存在のみ確認できましたが、こちらがどのようなコンテンツなのか気になります。 阪本: そこはまだヒミツなので、これからの情報にご期待ください。 3部作の完結編としても楽しめる『龍が如く8外伝』 ――TGSのステージイベントでは、阪本さんがゲーム実況者の牛沢さん(※)に、その場でゲームへの出演のオファーをされていましたが、実現の可能性はいかほどでしょうか?: ※牛沢氏:YouTubeやニコニコ動画などで活躍するゲーム実況者。公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@uszw/community)の登録者は168万人。 阪本: 言ったからには、ちゃんとやります。開発にかけられる残り時間も少ないので、急ピッチで進めているところです(笑)。 ――どのような役で出演されるのか楽しみです! ほかにも来たる2月28日の発売日に向けて、なにかお話できる展開などがあればぜひお聞かせください。 横山: 今後は全国で体験会を開催する予定です。もちろん、ただの体験会ではなく、言ってしまえばミニマム版TGSのようなものを想定しており、ファンセッションや物販などのイベントも企画中です。キャストの方とのサイン会もあるので、ぜひ楽しみにしていください。 さらに、今年の12月8日で『龍が如く』が19周年となり、20周年へ向けての歩みがスタートとなります。本作の新情報だけでなく、リアルも含めて世界が我々に注目せざるを得ないような仕込みを始めているので、龍が如くスタジオの動向にも注目していただければと思います。 ――最後に、本作を楽しみにしている、気になっているゲームファンに向けてひと言ずつメッセージをお願いします。 堀井: ジャンプを始めとして、本作は開発内でも新しい試みをふんだんに取り入れた作品になっています。また、真島らしさを感じさせつつも、これまで見られなかった新しい魅力も見いだせるようなタイトルになりました。現時点で、新たな『龍が如く』の可能性を広げると確信できる作品になっているので、期待していてください。 阪本: 外伝という形では2作目ですが、本作だからこそのチャレンジを詰め込みました。本作を遊んでもらえれば「こういう『龍が如く』もアリだよね」と言ってもらえると思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。 横山: 記憶喪失という設定は本当に便利なもので、本作はこれまで過去作を遊んだことがない方でも、違和感なく楽しめる物語になっています。もちろん、プロローグや基礎の部分には『龍が如く8』の設定が使われていますが、それ以外は何も知らない真島と同じ目線で、真島吾朗という人間の物語にのめり込んでいけるはずです。 また、じつは私の中で『龍が如く7外伝』と『龍が如く8』、そして本作は、3つでひとつの作品になっていると感じているんです。これまでの作品を遊んでくれているファンの方々は、ある意味3部作の完結編としても楽しめるんじゃないかなと思います。もちろん、物語を度外視したアクションゲームとして見ても、心底気持ちよく遊べるものになっているので、そこに少しでも興味があるようでしたら、ぜひ手に取っていただければ幸いです。