「壊すものを造って、批判を浴びとる。万博は、もっと夢があるもんやと思ってた」工事業者が語った「士気の上がらない現場」 リングやパビリオン建設の下請け経営者や作業員の本音
今宮さんは、複数の工事関係者に「どないすんですか」と尋ねた。「なんとかする」「分からない」との答えだったという。 「パビリオン建設のために重機を入れられへんと、工法はプレハブみたいな簡素なものに限られるはずやろ。誰が入場料数千円も払ってプレハブのパビリオンを見に来るんやろか」 ▽海外パビリオン パビリオン建設も、リング同様に士気は低調だ。ある海外パビリオンの建設を設計事務所から請け負った中部地方の建設会社は、関西での仕事も国家規模の仕事も、これまで経験がない。「良いものを造って名をはせたい」と、大阪に拠点を設け、工事を進めている。 会社の担当者は、万博工事を機に全国展開したいと野望を語るが「人員を割いて大阪に来ており、万博の工事が終わったら、地元のお客さんが離れているかもしれない」と不安も口にする。 リングは既に円になっていて、パビリオン工事は苦戦している。 「ゼネコンさんには、リングの組み立てをもう少し計画的にやってほしかった。こっちが遅れていて、リングが計画通りなのかもしれませんが。中のものを造っている人の気持ちも考えてほしい」
▽作業員の声 会場近くまで延伸し、新設されるのが大阪メトロ夢洲駅だ。駅の建設に携わる40代男性作業員は「急いでる感じがしない。開幕直前に突貫工事になると思う」と不安顔。 夢洲で道路や橋を造る50代男性は「今は土日は休めているが、このペースで今後休みが取れるのか」と遅れを心配した。 ▽「万博よりも、熊本と種子島やね」 再び今宮さんに話を戻す。今宮さんは、活気に欠ける万博工事とは対照的に、建設ラッシュに沸く地域が他にあると指摘する。 鹿児島県西之表市の馬毛島で建設が進む自衛隊基地計画に伴い、住宅需要が急増する種子島や、半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が工場建設を進める熊本などがそうだ。 会社の利益を考えれば、そちらに人員を割いた方が良いと指摘する。予算が頭打ちの万博は、他の大規模案件と比較しても、建設業者にとって利益が薄く「うまみがない」という。