日本ハム・伏見寅威 「万波がすべてですね」扇の要が描いた完璧なシナリオ/これぞプロの技
伏見寅威が描いたシナリオは完璧だった。7月14日のソフトバンク戦(エスコンF)。1点リードの7回二死二塁。投手は伊藤大海。走者は球界随一の走力を持つ周東佑京。打者はくせ者の甲斐拓也。同点とされたくない場面。チーム戦略として、外野陣は極端な前進守備。経験豊富な扇の要は状況を整理し、理詰めでピンチを脱するプランを立てた。 【選手データ】伏見寅威 プロフィール・通算成績・試合速報 もちろん、甲斐を打ち取ることが最優先。ただ、打たれても周東を本塁でアウトにする。ベンチの明確な方針と、その日の甲斐の打撃内容を踏まえて伏見は配球を組み立てた。「今日の甲斐選手は内寄りのボールは大きい当たりがあるけど、外寄りならおそらくそれはないだろうっていう配球」。大ケガをしない外角中心の攻めには、大きな保険もあった。 甲斐に右打ちをされても、右翼には強肩の万波中正がいた。「万波方向に行ってほしいっていう感じだった。うちの外野陣は全員信頼できるけど、一番信頼できるのが万波のところ」。伊藤には外角へのボールを要求し続けて3ボールとなり、4球目も外角。甲斐は打ってきた。右前へ落とされたが、計算通り。万波がレーザービームを発動した。 伏見はホームベースの後ろ側に立って万波の送球を待った。「ベースの前に立って送球を受けると追いタッチになって遅くなる。後ろ側で待つと走者に回り込まれないのでベース板の上に(ミットを)置けばアウト。まあ、万波がすべてですね」。緊迫した状況で、チームを勝利に導いた伏見の的確な立ち回りには数々の熟練の技、経験値が詰まっていた。 写真=BBM
週刊ベースボール