ドライバーの心は不完全燃焼? 同じV8を積む3台 MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ(2)
見た目通り1960年代的なマナー
マーコス・マントラのドライバーズシートへ座る。前方には、長くカーブを描くボンネット。ロッカースイッチと補助メーターが並ぶダッシュボードは、ジャガーEタイプ S3に似た趣がある。 【写真】同じV8を積む3台 MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ GTとMGF 同時期の964も (121枚) 3.9L V8エンジンは荒々しい。ペダルは重く、期待する反応のために力を込める必要はあるが、僅かに傾けるだけでスリリング。たくましいトルクが間髪なく生み出され、望まずとも、コーナーからの立ち上がりは全力になりがちだ。 ローバー社製の5速MTは、シフトレバーのストロークが長い。サスペンションは引き締まり、ステアリング・レシオはクイック。多少暴れても、即座にリカバリーできる一方、路面の凹凸を越えると跳ねるように揺れる。 ボディも共振を隠さない。日常的な環境で、マントラを意図通りに運転することは難しい。マナーは、スタイリング通り1960年代的。そこへ、モダンなダッシュ力と優れたブレーキが与えられている。便利なパワーウインドウも。 MG RV8は、TVRグリフィスとマントラの中間。リア・サスペンションはリーフスプリングが支え、構造としては旧式ながら、技術者は徹底的なアップデートを施した。 稀に減衰力不足を感じる場面はあるものの、乗り心地はソフトで遥かに快適。今回の例は日本から英国へ舞い戻ってきた車両で、エアコンとパワーステアリングが備わる。フォールディング・ソフトトップを背負った、グランドツアラーといえる。
最も快適志向なRV8 別次元のグリフィス
着座位置は、想像以上に高い。MGBより高いのは、肉厚なシートが理由だろう。ロールバーはなく、ウエストラインは低く、フロントガラス・フレームは細い。運転席へ座ると、上半身が顕になったような感じがする。 そのかわり、グリフィスやマントラと比べると、視認性は遥かに優れる。当時のローバー・グループは、RV8を弱点が少なく扱いやすいクラシックカーへ仕上げようとした。それを現すように、今回の3台では最も快適志向だ。 ところが速度が増すと、乗り心地には浮遊感がでてくる。隆起部分を通過すると、ステアリングホイールは不意に軽くなる。最高出力はマントラと同じ189psだが、車重は260kgも重く、さほど意欲的には加速しない。 0-100km/h加速は5.9秒がうたわれるが、その鋭さを体感するには、相当にエンジンを回す必要がある。そうすればキビキビ走れるものの、努力の継続は必要。惹き込まれるようなレスポンスはない。 最後にパープルのグリフィスへ。乗り比べてみると、特に動力性能で、まったく別のカテゴリーにあるといわざるを得ない。車重は1045kgで、1020kgのマントラより僅かに重いが、239psへ高められたV8エンジンが強烈なダッシュ力を見せつける。 TVRパワー社の技術者によって、レーシーでシリアスな特徴が与えられている。鋭く回転し、レッドラインまでリニアにパワーを生み出す。同じローバー由来の3.9L V8エンジンでありながら、明らかにスポーティだ。