<頂きへ!・センバツ2023大垣日大>/3 光ったチームワーク ナイン言動、観客に好印象 /岐阜
阪口慶三監督(78)は昨年10月22日の東海大会初戦で誰を先発にするか悩んでいた。対戦相手は愛知県大会3位の愛工大名電。阪口監督にとっては38年間監督を務めた東邦(愛知)時代から争ってきた相手で、あなどれないのはよく分かっている。だが、初戦翌日の2回戦のためにエースの山田渓太(2年)を温存したい思いもあった。 山田か、力を付けてきた保田篤史(同)、矢野海翔(同)でいくか。阪口監督は投手戦になると読み、山田を先発にした。試合直前まで悩み抜いた。 一回表、先頭の神川翔太(同)が四球を選び、1死後に高橋慎(同)が中前打でつないで一、三塁。4番の米津煌太(同)が追い込まれてから「最低でも外野フライ」との意識で外角の変化球をひろって中犠飛とし、1点を先制した。 その裏。マウンドに上がった山田は不安を抱えていた。東海大会の直前にあった常葉大橘(静岡)との練習試合で直球を痛打され、調子が読めなかった。だが、懸命に腕を振ると、調子のバロメーターである直球でファウルを取ることができた。波に乗った。 終わってみれば相手に三塁を踏ませず、与えた四死球は1。一回に挙げた1点を守る、高校に入って初めての完封劇となった。ショートで見ていた米津は「球速、制球とも抜群の投球」と舌を巻き、山田の先発起用が奏功した阪口監督は「会心の勝利だった」と振り返る。 続く三重県大会1位の三重との2回戦も山田が連投。2失点で完投勝利を収めた。愛知県大会1位の東邦との準決勝も中5日で山田が登板。序盤のリードを守れず4―7で敗れたが、2年連続の4強で締めた。 東海大会は、大垣日大の戦力面に加え、フェアプレーやチームワークも光った。 東邦との試合。六回に山田が胸に死球を受けたときだった。不安そうな表情を浮かべる相手エースに対し、山田は痛みをこらえて「全然大丈夫!」と声を掛けて一塁に向かった。接戦の中、余計な四死球で走者を出す「痛み」は自身も投手だからこそよく分かる。勝負にこだわりながらも相手を気遣う優しさを感じさせる一幕だった。 九回の攻撃では、西河陸人(2年)の二塁打で一塁から全力疾走で生還した山田が足がつって動けなくなると、三塁ランナーコーチの川島功聖(同)がすぐに駆け寄り、「ナイスラン」とたたえ、山田を背負ってベンチまで運んだ。 川島は「山田に疲れがたまっており、心配だったので駆け付けた。得点した良い流れを切りたくもなかった」と語る。ナインのスポーツマンらしい言動は、観客にも強い印象を残した。=つづく