「よかったよかった、助かった!」安堵もつかの間・・・兄弟のように育ったゾウ・エリーの最期 87歳男性が目撃した戦時猛獣処分
隣に住んでいた金澤さんは、その最期を覗いてしまったのです。 ■兄弟のように育ったエリーの最期 金澤敏雄さん 「最初はゾウのプールがあるわけですよ、そこに高圧電線を流して、エリーがプールに足を突っ込んだら、そこでスイッチ。でも、エリーは自分の運命を察知していたのか、全然寄り付かない。ウォーと泣いて、後ずさりする。だったらもう中止と。私は木の陰で見とってね、よかったよかった、助かった!と」 安堵したのもつかの間、立ち会っていた第6師団の司令長が口火を切ります。 金澤敏雄さん 「『おい、金澤、お前が殺せ!』やっぱり軍の命令に逆らうことはできません。」 父・太郎さんは、電流が流れる棒の先に、エリーの好物だったサツマイモを巻きつけました。 金澤敏雄さん 「エリーからいもだよ。エリーは鼻を上げて、それを口の中に無理やり押し込んで、それから何分もしないうちに横倒し、父もね、ごめんねエリー許してくれ、心の中で叫んで、押し込んだらしい。やっぱりその時の父の心苦しい気持ちは、ずっと亡くなるまで消えなかったそうです」 わが子のようにかわいがったエリーを自分の手で殺めてしまった無念さ。 さらに… 金澤敏雄さん 「そのゾウの肉はね、部隊の兵隊さんのごちそうになって消えていったんです。ゾウ舎の裏の水路があるでしょ。3日間、赤い血が溜まったまま。」 日本は、この日から4か月足らずで終戦を迎えました。 ■エリーの下あごの骨に涙 今、熊本市動植物園にはエリーの下あごの骨が展示されています。 当時、ゾウを解体した業者の親戚が自宅に持ち帰り、40年もの間、ずっと供養していたそうです。 金澤敏雄さん 「両端には花が植えてあって、真ん中には線香があって、私はそれを見て涙が出たです。願わくば、父が生きていたら、連れて行きたかったなぁって」 ■「戦争のない日本であってほしい」 11月11日、金澤さんの姿は福岡市の演劇ホールにありました。 行われていたのは、野坂昭如さんの戦争童話集の朗読劇です。
出演者「一か月以内に猛獣を殺処分せよと、戦時猛獣処分命令を出しました。」 作品のテーマが、動物園のゾウの殺処分だったということもあり、金澤さんは舞台に招かれ、エリーにまつわる展示も行われました。 金澤敏雄さん 「父の位牌の前でね、今日は博多に行って、お父さんとエリーの話をしてきますって。戦争のない日本であってほしい。それが願い。そうすれば、こういう話も生きてくるったい」 福岡市に4年ぶりに訪れた平和の象徴とも言われるゾウ。 戦争を語り継ぐきっかけを私たちに与えてくれています。
RKB毎日放送
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