ハリス「敗北」をすでに確信か…「トランプ優勢」を映しだす”ハリス支持のビヨンセ”が応援演説に行った「意外すぎる場所」
民主党はすでに「ハリス敗北」の手を打っている
労働者層、黒人男性、ヒスパニック系男性、若年層男性、アラブ系などの「出血」が止まらない民主党が、絶対数が多くしかも積極的に投票する大卒白人女性グループにメッセージを特化させるのは極めて合理的だ。 しかし、大卒白人女性向けのメッセージが効果を発揮したとしても、それはすでに民主党を支持しているグループの票を固める意味しか持たない。前述の失われた票が戻るわけではなく、新規の支持者が取り込めるわけでもない。 よく話題になるテイラー・スウィフトやビヨンセなどの超大物セレブによるハリス支持表明の効果についても、その主目的が民主党員として新規有権者登録する人の数の増加であったとするならば、失敗している。 たとえば、全米で最も重要な接戦州と目される東部ペンシルベニア州において、2020年には民主党の登録者数が共和党を63万人も上回っていたのに対し、そのリードは10月中旬に30万人にまで縮小している。 他の激戦州である南部ノースカロライナや南西部ネバダでも同様の傾向が見られる。加えて、2020年と比較して今年は、共和党員の期日前投票率が上昇し、反対に民主党員の期日前投票率が低下している。 中絶の争点化についても、大きな効果は見込めない。米政治サイトのポリティコの分析では、中絶が争点となった前回の中間選挙で民主党員の投票率はあまり伸びず、共和党員も中絶の保障に関する住民投票は支持する一方で、候補者については民主党ではなく共和党を選んだと報告されている。 さらに、この問題は各州レベルでほぼ決着がついており、今年は争点効果が薄い。だから、今回の大統領選で中絶の争点化がハリス候補を顕著に有利にするとは考えにくい。
ビヨンセが演説した「本当の目的」
これまでの分析をまとめよう。 重要かつ忠誠心の高い民主党支持グループで流出が続き、最も頼りになる大卒白人女性の支持固めの効果も限られているとするなら、人心掌握に失敗しているハリス候補の負けは決まったも同然である可能性がある。そこでハリス陣営は、敗戦を見据えた次善策を採用し始めたように映る。 たとえば、ビヨンセが参加したハリス候補の支持者集会は激戦州ではなく、トランプ氏当選が確実なテキサス州で行われた。ラストスパートは接戦州に時間と労力を集中的に投下しなければならないのに、なぜハリス氏は勝てないとわかっているテキサス州に「寄り道」をしたのだろうか。 実はハリス氏は集会で、テキサス州選出の有力な共和党上院議員である現職テッド・クルーズ氏に挑む、同州選出の民主党下院議員であるコリン・オールレッド氏をプッシュしていたのだ。この上院議員選は接戦だと伝えられる。 民主党にとり、大統領選の敗北がほぼ確実であるならば、せめて上院支配を維持して「ねじれ」に持ち込み、共和党が制約や束縛を受けずに政治を行う「自由裁量(フリーハンド)」を阻止することが目標になるとの見方も示されている。 加えてハリス陣営は、接戦州のノースカロライナで勝つことをすでに諦めたとの見方が出ている。 民主党支持者の期日前投票数が4年前と比較して34万人分も減少している同州で、選挙戦の最終週に流すテレビ広告予算270万ドル(約4137億円)のうち、200万ドル(約3065億円)分をキャンセルした(地元紙カロライナ・ジャーナル)からだ。