「女性の生きづらさ」を描く『燕は戻ってこない』制作陣が「男性もつらい」に対して思うこと
清水CPが「女性の生きづらさ」を描く作品に多く携わる理由
――清水さんは『腐女子、うっかりゲイに告る。』(2019年)でも制作統括をされていますよね。あれは、プロデューサーの上田明子さんが当時妊娠されて、「大変な業務はもうしなくて大丈夫」と言われたことで感じた違和感や怒りからスタートした企画だったと、以前インタビューで読みました。『虎に翼』の演出・橋本万葉さんの企画による『生理のおじさんとその娘』(2023年)も清水さんが制作統括ですね。女性をはじめとするマイノリティの生きづらさに耳を傾けたい、という思いがあるのでしょうか。 清水:「この人の怒りの根源はなんだろう」と考えることで気付かされることがたくさんあります。『腐女子~』のときの上田は、自分が妊娠をしたことをきっかけに、いろんなキャリアから外されそうになっていた。その彼女の怒りを横で見ていて、「わかる」なんて簡単に言ってはいけないけれど、思いの強さはすごく伝わってきたし、自分がそこから免罪されている立場であることに後ろめたさもありました。 また、『腐女子~』も『燕~』と同じく原作がある作品です。原作者の浅原ナオトさんは残念ながら亡くなってしまいましたが、ゲイの存在をなかったことにされることに対する彼の怒りに触れたとき、ついていきたいと思ったんです。 ――『生理のおじさん~』もまた、橋本さんの怒りから出発していたのですよね。 清水:『生理のおじさん~』は、生理というものへの理解を広めるとか深めるというレイヤーではなく、男性が上から目線でわかってあげようみたいなスタンスへの橋本の違和感がありました。当然男性にもいろいろわかってほしいけど、主体は女性なのである、そこを私たちから取り上げないでくれという考えが自分には発見で。自分の持っていた考え方というのが一面的なものでしかなかったことを突きつけられるというか。だから、それが大事なコンセプトになりました。 そういう意味で、後輩の女性クリエイターたちと組むと、我慢していたことがたくさんあるのがわかりますし、その怒りのパワーはついていくうえで頼もしいです。