センバツ高校野球 作新、集中打で逃げ切る 初戦突破に大拍手 /栃木
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第2日の19日、作新学院は大分商(大分)と対戦し、8―6で勝利した。二回に4点を先制して流れを引き寄せ、七回に1点差まで迫られたが、その裏に3点を追加して逃げ切った。次戦は大会第7日第3試合(24日午後2時予定)の3回戦で英明(香川)と対戦する。【鴨田玲奈、加藤昌平】 作新学院が一度もリードを許さず、着実に得点を重ねて初戦を突破した。 二回裏1死、武藤匠海が中前打で出塁。沢田秀翔も二塁打で1死二、三塁とすると、「初球を絶対に振る」と上野飛馬が左前適時打を放ち、2点を先制した。三塁側アルプススタンドでは保護者らが「おおー!」と声を上げ、メガホンをたたいて喜んだ。上野の父辰也さん(37)は「先制点を取って勢いを作ってくれた」とたたえた。さらに2死満塁の場面で、東海林智が右前適時打を放ち2点を追加。東海林は「一回で見逃し三振だったので、なんとかつなごうという意識で打つことができた」。東海林の父光泰さん(67)は「チャンスで1本出てほっとした」と笑顔を見せた。 六回裏2死二塁の場面では、代打の細谷季登が右前に運び、追加点。細谷の父正充さん(50)は「公式戦初ヒットだった。甲子園に連れてきてもらっただけでも十分だが、打ってくれてうれしい」と目を細めた。 投手起用は、小針崇宏監督が試合前に「全員で勝ちに行く」と語っていた通り、四回途中まではエースの川又楓が投げ、市川春之介、福冨竜世、磯圭太と継投した。川又は「しっかり緩急を使えたので良かった部分もあるが、2死からの四球など自滅も多かった。次は完投できるように調整したい」とさらなる活躍を誓った。 3点リードで迎えた七回表には1点差に詰め寄られたが、2死満塁のピンチで磯が相手打者を三振に仕留め、応援席はどっと沸いた。その裏に東海林、磯、斎藤綾介の3連打などで3点を奪い、突き放した。斎藤の父勝巳さん(51)は「よく打ってくれた。盛り上がりました」と満足げだった。勝利し、校歌を歌い終えたナインが応援席に駆け寄ると、鳴りやまない拍手に包まれた。 ◇また甲子園来れた ○…応援席では作新学院のOBたちも声援を送った。2017年のセンバツ大会に一塁手として出場した七井祐吏さん(23)は、チームが得点するたびに手をたたいて喜んだ。七井さんの一つ上の代は夏の甲子園で優勝しており、「なんとしても甲子園に出なければというプレッシャーがあった」と当時を振り返る。今年、作新学院は七井さんの代以来、6年ぶりにセンバツ出場を果たした。「センバツには、夏とは違う雰囲気がある。自分たちが出た甲子園にまた連れてきてくれた」と選手に感謝していた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇勝利導く配球を 作新学院・草野晃伸主将(3年) 脳裏にあったのは、昨年7月の県大会準決勝で打たれたサヨナラ本塁打。弱気なリードで求めた変化球を狙われた。直球が持ち味の投手に、大切な場面でそれを信じ切れなかったことを悔やんだ。 「真面目で模範的なリーダー」と小針崇宏監督やナインから信頼を得る。ただ、「真面目な分、リードは単調。まだ勝負師ではない」(小針監督)。現チームは複数投手の継投で勝つスタイル。個々の持ち味を引き出す捕手のリードは重要だ。 大分商戦では、1点を奪われた直後の六回無死満塁の場面で、マウンドの市川春之介にカットボールのサインを出した。「ピンチでこそ市川の一番の得意球を」と考えたからだ。結果、二直で打ち取りピンチをしのいだ。 試合後、この場面を振り返り「最少失点で切り抜けてほっとした」とほおを緩めた。チームの軸として、「投手の良いところを引き出せるリードや言葉を掛け、勝利に導ける配球をしたい」と次戦を見据える。【鴨田玲奈】