新米の出荷が始まった「コシヒカリ」、日本を代表するお米の発祥は何県?
コシヒカリと同じ産地の具を試す
炊きあがったばかりの白米は、それだけでもおいしいのだけれど、これに越前塩を軽くつけて食べると、さらにお米の甘さが引き立つ。いわゆる「塩むすび」。「不思議とこの塩と米がマッチするんですよ。同じ産地だからですかね?」と稲沢さん。コシヒカリ本来の味が楽しめる。 しかし、やっぱり、具が楽しい。「梅干し」や「もみわかめ」、「とろろ昆布」など数種類のなかから2種類を選ぶ。おむすびの具の代表格言えば、梅干しだろう。稲沢さんが軽やかに、おむすびを握ってくれる。
「お結びcafe」の梅は、福井県三方産の「福井梅」。若狭湾国定公園にある三方五湖周辺で育てられている紅映(べにさし)という品種。和歌山県産の「南高梅」と比べても果肉が厚くて皮が薄いので食感が良い。流通量も市場の1%と言われるくらい少ないから「幻の梅」とも呼ばれる。見ただけで、口の中がギューッと酸っぱくなる。この酸っぱさが食欲を増進させる。 これをとろろ昆布でいただく。福井県で、おむすびと言えば「とろろ昆布」。もちろん海苔で巻いたおむすびもあるけれど、県内では当たり前のように、とろろ昆布のおむすびが売られている。昆布の旨味は、海苔と違ったおいしさがある。もともと北海道から大阪に昆布などを運んでいた北前船の寄港地であった敦賀市では昆布の加工が盛ん。福井らしさを楽しむなら、とろろ昆布をおすすめしたい。
究極は、「塩うに」ではないだろうか。「越前塩うに」は、知多のこのわた、長崎のからすみに並ぶ日本の三大珍味のひとつ。ねっとりと濃厚で、磯の香りが立つ高級食材。口のなかでほぐれる温かいコシヒカリの間に、少しずつとろけていく甘い塩味を感じることができる。福井産でない塩うにも市場に出回ってはいるが、オレンジ色に染まった、生臭さのない、この「越前塩うに」独特の旨味や舌ざわりは表現できない味わいだ。 「お結びcafe」で提供されるコシヒカリは、福井市の東郷地区か大野市で収穫されたもののいずれかになる。東郷地区は福井市のなかでも、特に水田が広く見渡せる平野部で、酒蔵があるほど水が綺麗。大野市は特に水では負けておらず、環境省の名水百選にも選ばれた「名水の里」として知られる。