流行するアフタヌーンティー、実は食べ方マナーがあった? 半数が「知らなかった」
■ 「スコーン」は手で食べても大丈夫?
次に気になるスコーンのいただき方です。ティースタンドから取り皿にスコーンやクロテッドクリーム、ジャムを取り、「狼の口」と言われる割れ目でスコーンを横に割ります。ナイフを使うの?と思いますが手で割っていいそうです!というか、「神聖な石」がスコーンの由来なのでナイフは使わず手で割る方がいいとのこと。 そしてスコーンにクロテッドクリームとジャムをぬり、手に持ってパクパクといただいて大丈夫。ただし王族の方とお茶会をする場合は一口大にしてから、クリームとジャムをぬっていただきます。なかなかそんな機会はありませんから、より上品にいただきたい場合というイメージでよいのではないではないでしょうか。 「イギリスの南西部のコーンウォール州とデボン州はクロテッドクリームの産地なんですね。このふたつによって、クリームとジャムのどちらが先かという論争があるほどで、デボンはたっぷりのクロテッドクリームの上にジャムをつけます。コーンウォールはジャムをぬってからクリームをスプーンでのせます。論争が起きるほどですが、どちらでも好みで召し上がってください。ちなみにエリザベス女王はコーンウォール派だというのは有名な話です」(土井先生) 意外にもどちらを先に塗るかで味わいに差があるので、自分はデボン派かコーンウォール派か、おしゃべりしながら食べ比べてみても楽しいかもしれません。 人気のアフタヌーンティーのスタンドは、省スペースと省サービスから生まれたものです。広いスペースや十分なサービス要員がいる場合は盛り皿も平置きされます。トングなどがなければすべて手で取り皿に取ります。スコーンやサンドイッチは手でいただきます。ただし、大きなものはナイフを入れても構いません。ケーキはプチフール以外はフォークで食べたらよいようです。
■ 実は「会話が生まれる場所」だった
最後に、今回のようなベーシックなアフタヌーンティーではない、昨今増えている「進化系」の場合のマナーをお聞きしました。答えは「嗜好品ですから、食べたいものから食べればよいのです。お皿の上がきたなくならないように溶けていくものとか、おいしいうちにいただけるように乾いてしまうものから食べていくのがよいですね。温かいスコーンが来たら温かいうちに食べることがベースで、マナーはそれほど気にしなくても構いません」とのこと。 ですが、おいしいイチゴが提供されればそこからイチゴの話をふくらませたり、陶磁器の絵付けに興味を持ってみたりと、もう一歩進められればもっとアフタヌーンティーが楽しめるのではないかと土井先生は豊かなお茶の時間のヒントをくれました。 マナーというと堅苦しく感じますが、歴史や背景、理由があってこそのマナーでどれも納得できる内容でした。もちろんヴィクトリア女王の時代のマナーと今のマナーは異なりますし、集う面々にとっても異なります。こう食べなくてはいけないということよりも、おしゃべりを楽しみながら、気持ちよくチャーミングに過ごせるようにマナーを利用すると考えるのが、今のアフタヌーンティーにはぴったりなのかもしれません。 取材・文・写真/太田浩子 イラスト/よしださきこ 協力/土井桂茂子先生