ドジャース・ロバーツ監督になぜ批判が集まる!? ”有能”なのに評価が分かれる理由とは…?【コラム】
過去9年間、すべての年でロサンゼルス・ドジャースをプレーオフ進出に導き、今季も好成績のチームを牽引しているデーブ・ロバーツ監督。しかし、ファンの間での監督の評判は良いわけではない。これだけの実績を持ちながらも何故多くの批判が集まってしまうのか。今回はそんなロバーツ監督の真の実績について解説する。(文:Eli)
メジャーリーグの監督としての役割
メジャーリーグの監督は通常想定される監督とは大きく異なる。NPBにおける監督と言うと、多くの場合、程度の差こそあれチーム権限のほとんどすべてを掌握しているイメージがある。 昨季まで読売ジャイアンツの監督を務めていた原辰徳氏は、一部では”全権監督”と呼ばれ、現場のチーム指揮からどんな選手を獲得するかまですべてを決断していたとされている。 一方で、メジャーリーグのチームはオーナーの下に編成やスカウティングなどを担うフロントオフィスがあり、その下に実戦部隊であるチームがおかれている。役員表や運用状況などからロサンゼルス・ドジャース(おそらく他の球団も)は大体図1のような組織となっていると予想できる。 監督に与えられた権限は多くて試合・選手の指揮統制くらいであり、FA/トレードでの選手獲得やどんな選手をマイナーから昇格させるかなどについての権限はベースボール部門トップのアンドリュー・フリードマン氏が握っていると見られる。 監督の役割はメジャーリーグチームにいるコーチ、トレーナー、選手の指揮管理となる。グラウンドではラインアップ、継投策、チャレンジ権の行使、グラウンド外ではコンディションチェック、フロントと選手の橋渡しなどを行っているはずだ。 また選手の運用についても監督の一存では決められず、アナリティクスやスカウティング部門の助言やフロントオフィスの方針も踏まえた上で決めていくことになる。
有能なのに批判が多い…?
デーブ・ロバーツ監督は今年でドジャースの監督9年目。現在は2023年に始まった3年契約の2年目である。トータルで1320試合を指揮し826勝494敗、勝率にして.626となっている。これは驚異的な数字で、米分析サイト『Baseball Reference』によれば315試合以上指揮した監督では歴代4位だ。 もちろんこれは資金力と編成力をもつドジャースを指揮したという要素を考える必要もあるが、同じ境遇のニューヨーク・ヤンキース、アーロン・ブーン監督の勝率.585と比べても高い。選手との人間関係における評価が特に高く、たびたび公式X(旧ツイッター)で公開されるロバーツ監督が選手ミーティングで演説している姿は、これぞリーダーと言うものを感じさせる。 ところが、ロバーツ監督を毎年シーズン終了後に批判するのはもはやファンの間では風物詩となってしまっている。SNSには”Fire Dave Roberts”(ロバーツをクビにせよ)の文字が並び、メディアでは去就が取り沙汰される。そのたびにフリードマン氏が、「敗戦はロバーツ監督の責任ではなく組織の責任である」と擁護するまでが毎年の流れだ。 World Series or Bust(ワールドシリーズ優勝か大失敗か)と言われるほど期待の大きいドジャースでは負けた際にチームの代表のように”見える”ロバーツ監督に非難が集まるのは仕方のない面もあるが、それにしても叩かれ過ぎである。 ロバーツ監督に対する批判としてよくあるものとして、選手の起用法が挙げられる。ドジャースが試合に負けた際には、「あの時リリーフAの代わりにリリーフBを投入していれば勝てたはずだ!」や「なぜ不振の選手Cを使い続けるのか。即刻クビにしてマイナーの若手を昇格させよ!」との批判を見かける。 しかし、これは監督の役割やチーム状況を理解していない場合がある。レギュラーシーズンにおいて監督の役割は大きく分けて3つある。 ①試合に勝つこと ②選手を健康に保つこと ③新しい選手の役割を模索すること この3つ全てを同時に達成することは非常に難しく、監督の力量だけではもはや不可能である。 例えば、40試合の登板で防御率2.18(※日本時間8月27日時点)と、左リリーフの一角として頭角を現したアンソニー・バンダの台頭は主要リリーフばかり使っていては起こらなかっただろう。ロングリリーフからスタートさせ最終的には試合の大事な局面で使うことで立場を確立させる必要がある。 また、リリーフの穴埋めとして登板したヨハン・ラミレス(既にDFA)はチーム内リリーフトップの4敗をしているが、これはエバン・フィリップス、ブレイク・トライネン、ダニエル・ハドソンなどが登板過多で使用不能になってしまった、あるいはけが人続出で投手が当たりない状況でやむを得ず厳しい展開で出した結果である面が大きい。