中性脂肪は恐れなくてもいい⁉…健診のとき知らないとヤバい「動脈硬化で死に至る」意外な項目
毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。 『健診結果の読み方』連載第19回 『「糖質ゼロ」のビールは炭水化物ゼロではない! 知っておくべき「太らない」商品の残酷な真実』より続く
中性脂肪とはなにか
健診で測る脂質関係の項目は「中性脂肪(TG)」「HDLコレステロール」「LDLコレステロール」の3項目です。これら3項目は、職場健診や特定健診の必須項目になっています。 また「総コレステロール」という項目が入っている会社もあります。血中コレステロールの総量で、LDL・HDLコレステロールの合計に近い数字になります。 まずは中性脂肪。「トリグリセリド」とも呼ばれており、「TG」と表記されていることもあります。ちょっと難しそうですが、実は我々が普通に口にする動物性脂肪や植物性脂肪と同じものと考えて差し支えありません。 脂肪は、化学的には脂肪酸が3個(トリ)、グリセリンという分子にエステル結合したもの(グリセリド)です。つまりトリグリセリドなのです。 脂肪酸には多くの種類があって、どれが健康にいいとか悪いとかといった話題が尽きません。テレビの健康番組などで飛び交っている「不飽和脂肪酸」や「オメガ脂肪酸」、サバやイワシの「DHA」や「EPA」なども、数ある脂肪酸の仲間です。
中性脂肪を怖がりすぎない
食物中の中性脂肪は、小腸で吸収されます。しかしそのままでは水に溶けないので、タンパク質などと結合して「リポタンパク質(リポプロテイン:LP)」と呼ばれる粒子を形成した後、血液中に放出され、筋肉や内臓に運ばれて消費されるのです。また余った分は、肝臓や皮下脂肪、内臓脂肪として蓄えられます。 健診では、採血で得られた血液中のリポタンパク質を化学処理して、中性脂肪の量を測定します。 令和2年度(2020年度)の東京都の結果を見てみましょう。 男女とも、平均値は全年齢で基準範囲に収まっています。 ただし男性では、全ての年代で3~4人に1人が基準範囲を超えています。逆に言えば、中性脂肪が200や300あったとしても、あまり心配する必要がないのかもしれません。 実際、中性脂肪が高いからと言って、すぐにどうなるわけではありません。以前は動脈硬化などの原因になるから、中性脂肪をしっかり下げなさい、と言われていました。しかし最近は、LDLコレステロールのほうが動脈硬化を起こしやすく、中性脂肪はさほど悪者ではないと考えられるようになってきています。だから、医者にもよりますが、300ぐらいまでならあまりうるさいことを言わないはずです。ただ余分に食べた脂肪は、皮下や内臓の周りに蓄積されて、さまざまな生活習慣病の遠因になりますから、ほどほどに越したことはありません。 なお食後に中性脂肪が大きく跳ね上がる体質の人が、結構いることが知られています。なかには500以上に上がる人もいるようです。ですから「いい結果」を望むなら、食後10時間以上たってから採血に臨んだほうがいいでしょう。 『「脳梗塞」と「心筋梗塞」のリスクが急上昇…健康に気を付けるなら絶対知っておくべき「コレステロールの真実」』へ続く
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)