大きな飛躍を遂げた久保凛の2024年シーズン 来年の東京世界陸上800m出場に向け、さらなる成長を誓う
【来年の東京世界選手権出場を目指して】 6月の日本選手権までは2分3分台の記録に止まり、「なかなか(当時の)高校記録の2分2秒台にいけない」と話していた久保だが、その殻を一気に破ったのは「1周目を速く入って最後を粘る練習として参加した」という、チームで参加した7月13日の4×800mリレーだった。 実施回数の少ない特殊種目ゆえ、それまでの日本記録を8秒近く更新する結果だったが、4走を務めた久保は、(バトンパスの引き継ぎと走り出しのある)リレーとはいえ最初の400mを56秒台で入り、2分01秒台で走りきったという。「リレーはひとりじゃないので、チームのためにと思って1周目を速く通過することができた。2周目は落ちてしまったけど、1周目を速く通過できたのが、2日後の日本記録につながったかなと思います」と振り返る。 殻を破れたからこそ見えてきた、来年の東京世界選手権参加標準記録(1分59秒00)突破。そこへ向けて「自分のなかでは、まだ少し遠いかなという気持ちもあるが、できないことはないと思っているので、もう少し持久力もスピードも、つけていきたい」と話す。 ただ、3月から走り続けてきた疲労もあるなか、「1周目で1分を切って入らないと絶対に2分は切れないので、1分を切って入るレースを継続しつつ、もう少しリラックスして走れるようにしたい」という思いで攻め続けた。その結果、シーズン最後の2レースを2分2秒前後でまとめられたのは地力がアップした証しと言えるだろう。 「今シーズンは日本記録を出した部分では大きな成長ができた気持ちはあるが、まだ1回しか2分を切れてない。成長はできているけど、まだもう少し成長しないといけないシーズンだったと思います」 久保は飛躍した今シーズンについて、こう総括した。国内ではなかなか競り合うレースができない現状もあるが、世界での戦いを見据えた高い意識は芽生えている。 「誰かに引っ張ってもらったほうが記録は出やすいと思うけど、自分で出せる力をつけていかないといけないと思います。人に頼っているようではダメなので、自分で走って何本でも1分59秒を切れるようにしたい。高い壁だけど、そう思っています」 快進撃を続ける久保の強さの秘訣には、「中学の頃からあまりケガをしていない」ということもある。サッカーをやっていたことで体の使い方がうまくなり、ケガを避けられるのかもしれないと笑顔を見せる。 これから目指すのは、チームで挑戦する駅伝。 「11月にはまず大阪府の高校駅伝があるので、そこで優勝して近畿大会、全国大会に繋げられるようにしたい。いつもチームに支えられているので、次は駅伝で自分が活躍してみんなで喜び合いたいと思っています」 そのなかでも、来年への意欲も見せる。今季、U20世界選手権で同世代の世界トップランナーと戦って必要だと感じたのは、高いレベルでの持久力である。 「今年は前半からいい流れを作れたけど、ラストの部分で納得いかないレースも多かった。やっぱりラストの100mで足が動かない状態になっていては話にならないので、そこでもうひとつギアを上げられるようにならないといけないと感じています。 (駅伝シーズンに向けて)長い距離も走れるようにするための持久力が必要だけど、そのなかでもスピード面も落とすことなく、という練習ができたらと思います」 視線は、来季へのさらなる飛躍に向いている。
折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi