若者はどうしてクロージングが苦手なのか? 新米のら猫コンサルが見た自動車ディーラー「若者のリアル」(6)
若手のセールスパーソンは商談の最後に「本日お決めください」という一言が言えず、お客さまの即決を逃してしまうことが少なくありません。どうしてこの一言が言えないのか聞いてみると、決まって同じ答えが返ってきます。自分がお客さまの立場だったら「押されるのは嫌なので言えません」と。しかし、お客さまはあなたではないので、同じ意見とは限りません。まずはそういったマインドを変えていかなければならないのです。 「これを言ったら嫌われるかも」「イメージ悪く思われないか心配」このような気持ちではクロージング力に欠けてしまいます。お客さまに嫌われるのは、相手にとって不必要なものを提供した時です。いらないと思われているものを勧めるのは、単なる押し売りに過ぎません。セールスパーソンはお客さまにとって必要なものを提供しなくてはなりません。しっかりとニーズを把握し、お客さまに素敵なカーライフを提供できる商品であれば、「本日お決めください」の一言は相手の背中を押す「推し売り」の言葉に変わります。 クロージングの場面ではお客さまから答えをもらいますが、実はお客さまの答えはセールスパーソンが言わせていることもあります。例えば、セールスパーソンがお客さまに「ご検討ください」と言えば、お客さまの中には検討するという選択肢が生まれてしまいます。 日常の中でも似たようなことがあります。レストランへ食事に行った際に店員から「お食事前の飲み物はいかがいたしますか?」と聞かれれば、こちらの答えとしては、メニューは何があるのか、状況によってはいらないので「NO」を言う時もあります。選択肢がいくつもあれば、NOという答えも選びやすくなります。反対に「お食事前の飲み物はスパーリングワインとビールのどちらになさいますか?」と聞かれれば、どちらか一方を選ばなければならない状況になるので、NOとは言いづらくなります。 お客さまがご来店され、まずは相手の緊張をほぐすためにアイスブレイクをしましょう。緊張を解き信頼関係を築けたらニーズ把握を行います。聞き出したニーズに対し商品説明をすることでお客さまの購入意欲が上がり、商品の魅力を十分に感じていただいている状態で試乗を行います。試乗ではお客さまが思い描く理想を疑似体験していただきます。 ここまでのプロセスでお客さまに十分寄り添った提案ができていれば「欲しい!」という状態になっているはずです。そこでのあなたの「本日お決めください」の一言は、お客さまにとって最後の一歩を踏み出せるありがたい言葉になります。目の前にいるお客さまの素敵なカーライフはあなたのクロージングの一言から始まりますよ。 文:株式会社プログレス 江原忠宏 〈プロフィル〉えはら・ただひろ 2006年東海大学電子情報学部卒、同年国産ディーラー入社。営業職、店長を務めるも、17年5月輸入車ディーラーに転職。入社2年目に係長昇進、3年連続で販売優秀者表彰。その後人材育成にやりがいを見出し、2020年プログレス入社。「人材を『人財』に」をテーマに活動中。静岡県出身、41歳。