藤原ヒロシが語る“ガジェット論” 「テクノロジーの進化とともになくなっていくもの」
Ankerと藤原ヒロシ率いるデザイン集団「fragment design(フラグメント デザイン)」がコラボレーションして生まれた急速充電器『Anker Prime Wall Charger (100W, 3 ports, GaN) FRAGMENT Edition』。側面に大きく書かれた「100W」の文字はインパクト抜群。多くの充電器というのは一見してW(ワット)数がわかりにくいものだが、このエディションは一目瞭然だ。 【画像】藤原ヒロシ氏のカバンの中身 藤原氏がセレクトしたRAMIDUSのポーチとセットで売り出されたこの製品の発表に際し、同氏へのインタビューをおこなう機会を得た。日頃から世界を飛び回る多忙な藤原氏が充電器に求めることを中心にお話を伺った。 ■「テクノロジーの進化はモノが小さくなることと一つに集約されること」 ーーあらためて今回のコラボの経緯を教えて下さい。 藤原:雑誌などで僕がAnker製品を使っている、ということをAnkerさんに見つけていただいて、共通の友人を介してお話を頂いたんですよね。出先でも充電器は常に持ち歩いているし、一緒に何かできるんだったら嬉しいなと思って、企画が始まりました。 ーーコラボレーションにあたって藤原さんから出した条件や、製品に対する要望はありましたか。 藤原:特にはなかったですね。「(もっと出力が高い)○○ワットの製品がほしい」とか言って実現するわけでもないので、テクノロジーの分野はAnkerに任せて、その中で僕ができることをやったという感じです。でも、ラインアップの中では比較的出力の高い製品で進行できました。 あとは、飛行機で使うときに電源のプラグがすごく抜けやすいので、「抜け落ちにくいものがいい」ということは伝えました。同シリーズの過去の製品よりも、落ちにくい形状になったようです。 ーーデザインが明快ですよね。「100W」って大きく書いてある。 藤原:迷っちゃいますもんね、似たような製品が多いし。僕はAnker製品をめちゃくちゃ使っているんだけれど、良くないところはすぐによく似た新しい製品が出てくるところ(笑)。 そもそも、世の中の人はあんまり使っている充電器のW数とかを気にしていないですよね。USB-CとかLightningとか、端子のことは気にするんだけれど、繋げられたら全部同じだと思っている人が多い。でも、出力が高ければ充電する機器によって急速充電できるものもあるし、本当に速い。 ーー昔から同じものを使い続けていたりすると、「充電器を買い直す」という事を意識することが少ないのかもしれません。 藤原:そうか……iPhoneとかMacを持ち歩く人とか旅行に行く人とかは絶対知っていたほうがいいと思うんですけどね。この前も僕の友達がMacBook AirをMacBook Proに買い替えたんだけど、充電器をAirのまま使い続けていて。Proに付属している充電器のほうがパワフルだから絶対充電も速いのに、「挿さるからOK」みたいな感じで使い続けちゃってるんですよね。「絶対良くないよ」って言ったんですけど。 ーー藤原さんが充電器を選ぶうえで、大事にしていることはありますか。 藤原:絶対に持ち歩くものなので、小さいものがいいなとは思います。MacBookに付属のやつは大きいですし。あとは、無駄な時間を省きたい。 今回充電器に「100W」って書いたのと似たような話として、ヘッドフォンの左右(L・R)もあんまり気にしない人が世の中に結構いるんですよ。これ、音楽をやっている人からすると大問題で、L・Rの表記がちっちゃすぎる。もう全部のヘッドフォンにでっかく「L・R」って書いてほしいし、自分がもし手掛けるならそうしたい。 ーーなるほど。ヘッドフォンや充電器の他に、藤原さんが普段身につけたり、持ち歩いたりしているデバイスやガジェットはありますか。 藤原:ガジェットとかって、実はテクノロジーの進化とともになくなっていくものですよね。テクノロジーの進化ってモノが小さくなることと一つに集約されることなので、だいたいの製品がiPhoneに集約されていったし、そういう意味ではガジェットの命って短いんですよね。 昔はコンデジがあって、ケータイがあって……という感じだったけれど、今はそれがiPhoneに集約されてしまったし。あとは電子辞書とかPDAとかもそうですよね。だから、最近はそういうものもあまりないですね。 ーー過去にはそういったデバイスも持ち歩いていましたか? 藤原:そうですね。ガジェット的な製品は結構好きで、デジカメもカシオ『QV-10』から使っていますし、電子辞書とか、あとは『PalmPilot』も使っていました。PDAは大好きだったので、iPhoneが出たときにはすぐ買いました。Appleには一定の信頼を置いているので。 ■いつでも持ち歩くMacとの出会い 「仕事も遊びも、全部Macの中に集約されていった」 ーーMacはいつ頃から使われていますか? 藤原:最初に買ったのは『Macintosh IIFX』で、その後『PowerBook 170』を買いました。『漢字Talk』のフロッピーの量にびっくりしましたね(笑)。ハードディスク容量が40MBの時代でした。それまではAtariでしか使えなかった『Cubase』って音楽ソフトのMac版が出たのがそのころで、あとはアドビのソフトも使っていました。音楽とDTPに使っていて、そのころから今に至るまであまり用途は変わっていません。90年代以降は仕事も遊びも、全部Macの中に集約されていったといってもいいかもしれない。 振り返ると、さっきも言ったようにどうしても必要なガジェットって本当になくなってきていますよね。もう全てがiPhoneに集約されちゃって。最近だと『Meta Quest 2』とかも買ってみたんですけど、もともとそんなにゲームをするタイプでもないし、結局使わなくなっちゃうんです。『Vision Pro』もすごいとは思うけど、何に使って、どうなっていくのかなということのイメージがまだ沸かなくて、気になっています。 ーー画面の中で起こることと、実際に起こることの違いについて、藤原さんはどのように思われますか? たとえばDJをするとして、フロアのお客さんと対面して生のアクションが帰ってくるような体験と、画面の中で起こることの体験というのは、繋がっているところはありますか。 藤原:やってることは同じだけれど、中身は結構違いますよね。やっぱりパソコンの中のものは空気感がなくて、外のものは空気感がある。それは未だに変わらない。DJでもそうだと思うし、人との繋がりもそう。でもどっちが悪いとか、もうこっちだけでいいとか、そういう話でもないですね。両方が必要なものだと思います。 ーー今回のコラボ製品は「急速充電器・ケーブル・ケーブルバンド・ポーチ」のセットですね。なかでもポーチがユニークだと感じました。 藤原:これはRAMIDUSというブランドの僕がいつも小物入れとして使っているやつで、サイズもちょうど良かったので合わせてみたんです。僕は小物入れがカバンの中にいくつかあるのは結構好きで。これは充電、これは薬、これは歯ブラシ、とかって分けて入れる、そういうのが好き。 ーーベルクロ(ケーブルバンド)の形に課題があるとお聞きしました。 藤原:引っ張ったら取れちゃうんですよ。自分がベルクロを作るなら、こうはやらないぞってことです。 ーーなるほど。ヘッドフォンしかり、ベルクロしかり。 藤原:あと、世の中の「これもっと何とかなるだろう」と思うのは、飛行機に乗るときのセキュリティチェック。あれって、場所によってカバンからパソコンを出さなきゃいけないところと、最近はもう入れたままのところとあるんですけど、それだったらもう、そのまま通るだけで全部チェックしてよっていう。 昔『トータル・リコール』だったかな、近未来を描いた映画で、3mぐらい通路を歩くと全部スキャンされるっていう仕組みがあったんですけど、そろそろそうなってもいいのにと思うんですよね。無駄な時間を何とかしてほしい。そっちにイーロン・マスクが執着してくれればいいんですけど(笑)。 ■製品情報 『Anker Prime Wall Charger (100W, 3 ports, GaN) FRAGMENT Edition』 サイズ:約60 x 42 x 39mm 重さ:約178g 入力:100V-240V 50/60Hz 2.1A パッケージ内容:Anker Prime Wall Charger (100W, 3 ports, GaN) FRAGMENT Edition、USB-C & USB-C ケーブル (1.8m 限定デザイン) 、オリジナルケーブルバンド、オリジナルポーチ、取扱説明書 ※好評につき現在は販売終了
文=白石倖介、写真=池村隆司