圧倒的な名演を収録した『クリームの素晴らしき世界』は70’sロックへの道標となった
OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回はロック史上に残る名演を収録した『クリームの素晴らしき世界(原題:Wheels of Fire)』を取り上げる。本作は2枚組で1枚はスタジオ録音、もう1枚はアメリカでの公演を収めたライヴ盤である。たった2年半の活動で空中分解してしまった彼らだが、クラプトンのギターをはじめ、ジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーの壮絶なインタープレイがロック界に与えた影響は絶大なものがある。 ※本稿は2019年に掲載
アレクシス・コーナーのロックを進化させたブルース塾
ジャズは高度なテクニックが必要とされる音楽なので、各楽器が長いソロを取るのは当たり前のことだが、ロックの場合(特に60年代中期まで)は主にヴォーカルや楽曲が中心で、ギター以外の楽器で長いソロを取ることは稀だった。その傾向が変わってきたのは、イギリスのブルース塾ともいえるワークショップを主宰していたアレクシス・コーナーやジョン・メイオールなど、重鎮たちの下で切磋琢磨していたアーティストたちが次々にデビューしてからである。特にアレクシス・コーナーはジャズ出身で、彼のもとで修行していたプレーヤーはジャズの基本的な部分を叩き込まれていただけに、門下生以外の8ビートしか経験したことのないミュージシャンとはまったく違っていた。 中でも、コーナーの一番弟子であるグレアム・ボンドはコーナーのブルース・インコーポレイテッドに参加、63年に自身のバンドとなるグレアム・ボンド・オーガニゼーションを結成する。ボンドを支えるメンバーはジンジャー・ベイカー、ジャック・ブルース(後のクリーム)、ジョン・マクラフリン(マハヴィシュヌ・オーケストラのリーダー)、ディック・ヘクトール・スミス、ジョン・ハイズマン(コロシアム)ら強力なアーティストたちで、みんなコーナーの塾に出入りしていたメンバーだ。この少し後、彼らはブリティッシュ・ジャズロックの原型を作り上げることになる。