元CAが語るカスハラ体験はリアル「スチュワーデス物語」 動画撮られ拡散「パンツの線が出ている」
客が理不尽なクレームを行う「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題化するなか、航空大手・ANAホールディングスが、本格的な対策に乗り出したと報じられた。「複数人で対応する」「相手の承諾を得た上で録音・録画など記録する」などと対応を統一化し、マニュアルにまとめたという。“空の旅”の道中、どのようなカスハラ行為が横行し、客室乗務員(CA)たちはどう対処しているのか。元CAの女性2人に、リアルな現場の実態を明かしてもらった。 【写真】CAが「枕を2つ用意」させられる自民党議員はこちら * * * 「食事を運ぶカートがお客様の体に少し触れてしまったようで、中年男性に『責任者呼んでこい!』と大声で怒鳴り散らされて……」 自身のカスハラ体験を振り返るのは、2017~19年までANAでCAをしていた中川芽衣さん(仮名/30)。過激なクレーマーのほか、セクハラをしてくる乗客の対応にあたったこともあるという。 「ハイペースでお酒を飲まれている方がいると、CA同士で『もう〇杯目だから、次に頼まれたら注意差し上げて』と共有しあいます。でも、『機内は気圧の関係でアルコールが回りやすいのでお水をお持ちしましょうか?』などとお声がけすると、『なんだよ姉ちゃん!』と絡んでくるお客様はけっこういましたね」 中川さんは「仕事なのでこの程度は我慢しよう」と受け流していたが、接客中に飲み物をかけられて堪忍袋の緒が切れ、退職したCAもいた。 また、日本人ならではのクレームの特徴もあったという。外国人客は不満があればたいていその場で指摘してくれたが、日本人客は後から航空会社に訴えてくる傾向があった。 「会社から『クレームが入った』と呼び出されて、何かと思ったら、『窓の日よけシェードが開けっぱなしで、不快な思いをした』とのことで。直接言いづらいのか、大半はあまりにささいな内容でした」
機内で対応に困る乗客がいたら、「絶対的な存在」である先輩CAに指示を仰ぎ、従った。だがどんな場合でも一貫していたのが、安全第一の原則だ。離陸前にドアロックなど安全確認をしている最中は、しつこく話しかけられても作業を優先する。飛行機が揺れてシートベルト着用サインがついている間は、トイレに行こうとする人がいれば止め、温かい飲み物を求められても断る。 ■カスハラはなぜなくならない? 「CAはサービス要員でもありますが、一番の存在意義は安全確保です」と、きっぱり口にする中川さん。CAの足を引っ張るカスハラ行為がなくならない理由を、どう捉えているのだろうか。 「日本の航空会社は“お客様は神様”という意識でJapan Qualityのおもてなしを提供しています。ブランド価値を高め、多くのファンを獲得しているのは素晴らしいこと。でも一方で、『ANAやJALなんだからこれくらいできて当然』『前はやってもらった』と、求められるレベルがどんどん上がったり、丁寧な接客にあぐらをかいてカスハラをするお客様を生み出したりする側面もあるように思います」 正直、現役時代は、「ここまで丁寧に対応する必要ある?」とモヤモヤしたこともあるという。長距離フライト中の“スリーピングケア”はその一つだ。食事の配膳中、眠っている乗客はすべてメモし、目を覚まし次第「お食事されますか?」と声をかける。寝ている人数が多かったり、着陸が迫っているタイミングで起きる客がいたりすると、業務に大きな負担がかかる。だが、「お客様に満足いただきたい気持ち」と「クレームになったら困るという不安」から、努めて笑顔で対応していたという。