【世界の禁煙事情】男性喫煙率が最も高い国は?英国では2009年生まれ以降は生涯タバコ購入禁止に、日本の現状は…
■ 英国で世界一厳しい「タバコ販売禁止法」 世界にはタバコの販売を禁じる国もあります。よく知られているのは、アジアの仏教国・ブータン。葉タバコは悪魔の血で育つとして忌み嫌われ、1729年から規制を始めています。その後、販売の規制は次第に厳しくなり、2010年には国内で販売と栽培が全面禁止されました(ただ、密輸は完全になくならず、コロナ禍の際は密輸の関係者によって国内にコロナが広まったことなどから、規制は一部緩和されています)。 ブータンのタバコ規制は宗教観に関連するものですが、厳格な法規制によってタバコを追放する動きは、各国で強まるばかりです。 2008年施行の「反喫煙法」を強化し、2023年1月に“世界で最も厳しい法律”としたのは、メキシコです。 愛煙家の多い北米大陸では毎年100万人以上がタバコ関連で死亡していると言われています。メキシコでは現在、飲食店や職場はもちろん、公園やビーチなどあらゆる場所で喫煙が禁止となりました。タバコの広告も禁止。タバコ会社がイベントなどのスポンサーになることも禁止。店舗ではタバコの陳列もできません。 英国では、予防可能な死因の第1位が喫煙であり、毎年8万人以上が喫煙関連だったことから法規制を強めていました。そして2024年4月16日には、2009年生まれ以降の者は生涯にわたってタバコを購入できないとする法案を下院で可決。それも賛成386、反対67という大差でした。 同様の法律は2022年にニュージーランドで成立していましたが、政権交代に伴って廃止されているため、施行されると英国の法律は世界で最も厳しいものになりそうです。
■ スウェーデンは嗅ぎタバコ「スヌース」で「禁煙」? 英BBC放送によると、ビクトリア・アトキンス保健大臣は法案の採決に際し、「依存症に自由はない。ニコチンは人々の自由を奪うものだ。喫煙者の大半は若い時にタバコを吸い始め、そして後悔している。彼らの4分の3は、もし可能ならタバコのない人生をやり直したいと考えている」と語りました。 また、政府の医務官は若い臨床医時代の経験を披露。「喫煙によって動脈を損傷し、脚の切断を迫られた患者が、病院の外でタバコを吸いながら泣いているのを見たことがある。それはタバコ中毒の悲劇だ。選択の問題ではない」とコメントしています。 喫煙率が5%台になったスウェーデンは、欧州で初めての「禁煙国」(WHO基準で喫煙率が5%未満)になるのではないか、と言われています。それに大きく寄与しているのが、嗅ぎタバコの「スヌース(Suns)」。火を使わないため、煙も出ず、受動喫煙のリスクはゼロに近いとされています。 麦茶パックに似た形状の袋を上唇と前歯の間に挟んで、ニコチンを摂取するもので、匂いも出ないことから紙巻きタバコの代用として多くの国民が使用しています。 ただ、スヌースに含まれるニコチンなどには紙巻きタバコと同様、発がん物質が含まれ、依存症を引き起こすリスクもあります。「禁煙国」に近づいたとしても、健康被害のリスクが減らないのであれば、本質的な意味はないのかもしれません。 フロントラインプレス 「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo! ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。
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