待望の予約受注スタート 「世界一売れているVW車」の実力が気になる “全方位的に進化”した新型「ティグアン」公道での印象は
軽快に駆け出す「1.5 eTSI」&ジワジワと車速を高める「2.0 TDI」
このように、内外装は素材の質感やディテールともに上質なものに仕上げられていますが、実際に走ってみてどうなのかも気になるところでしょう。
まず試乗したのは、1.5リッター4気筒ガソリンターボエンジンを搭載する「1.5 eTSI」の前輪駆動モデル。 エンジンの力にモーターアシストが加わることで、アクセルペダルをそこまで深く踏み込まなくても、7速のデュアルクラッチ式トランスミッション“DSG”の切れ味いい変速とともに、エンジンの力をリズミカルに引き出し、軽快に駆け出していくことができます。 アウトバーンの本線に合流する際、アクセルペダルを深く踏み込んでフル加速を試してみると、エンジンは回転数を高めながら気持ちよく吹け上がってくれて実に爽快。環境性能を意識したハイブリッドカーでありながら、エンジンフィールを大事に磨き上げている点は「1.5 eTSI」ならではの魅力といえるでしょう。 では「2.0 TDI」を搭載するモデルにはどんな特徴があるのでしょうか? 2リッター4気筒ディーゼルターボエンジンにも7速DSGが組み合わされていますが、こちらは“4モーション”と呼ばれる4WDとの組み合わせになります。 ドイツでステアリングを握ったのは、255/40R20サイズのタイヤを装着する「Rライン」です。「1.5 eTSI」の前輪駆動モデルと比べると、適度な重量感が落ち着きをもたらし、加速時は瞬発力というよりもジワジワと車速を高めていくタイプ。 ディーゼルならではのトルクは力強い上に、「Rライン」仕様ということもあって、ステアリングを握る手のひらにはしっかりとした手応えを与えてきます。150~160km/hの速度域で巡航しているときも、安定した走りが安心感をつながっていました。 また、日本とは異なるハイスピードな走行環境では緊張感が伴うものですが、15インチの大型タッチディスプレイはカーナビの情報などをひと目で把握しやすいと感じました。 3代目となる新型「ディグアン」には“MQB evo”と呼ばれる進化した横置きエンジン用のプラットフォームが採用されています。これにより、走りの基本性能が熟成されているのはもちろんのこと、このクラスのモデルとしては贅沢ともいえる新次元の制御を採用したことで、かつてのモデルを超える快適性と操縦性を実現しています。 さらに、「1.5 eTSI」、「2.0 TDI」のどちらのモデルにも共通して感じられた進化は、静粛性レベルが格段に高まっていたこと。ディーゼルの「2.0 TDI」は、時折、頼もしい音色を伝えてくる場面もありますが、「1.5 eTSI」はまるで2クラス上の車格のクルマに乗っているかのように静かで快適に過ごすことができました。 また、優れた操縦安定性に貢献してくれる“アダプティブシャシーコントロール“DCC Pro”にも感心させられました。 従来の“DCC”は1バルブ式でしたが、新型には2バルブ式が採用されていて、ダンパーの伸び側と縮み側の減衰力の制御を連続的におこなうものへと進化。快適な乗り心地を実現しておだやかなリズムとしなやかな走りを楽しんだり、少しペースアップしてレスポンスよく走らせたりと、状況に応じて走りのキャラクターを変えることができます。 そのため、たくさんの荷物や同乗者を乗せて走るとき、スポーティな走りを満喫したいときなど、重心が高いSUVが苦手としがちな状況でも巧みな足さばきを披露してくれます。今回の試乗でも、一段上の操縦安定性とドライブする楽しさを満喫させてくれました。 * * * よりスタイリッシュに生まれ変わったエクステリアデザイン、快適な室内空間と先進のデジタルデバイスの採用、さらに磨きがかかった走りなど、大きく進化を遂げた3代目「ティグアン」。 “先進機能の民主化”がVWのクルマづくりのテーマだとするならば、新型「ティグアン」は紛れもなく、このクラスのスタンダードを引き上げる1台といえるでしょう。
藤島知子