アジアの戦いが開幕したヴィッセル神戸 過密日程の最中、J1連覇へのカギ・注目選手は? 記者に聞く
サッカー・J1リーグ戦で連覇を狙うヴィッセル神戸。その一方で、17日からはアジアクラブナンバー1を決めるAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)2024-25もスタートし、初戦ではブリーラム・ユナイテッドにアウェイでスコアレスドロー。勝点1からの船出となっています。 【写真】サッカージャーナリストがイチオシ! ヴィッセル神戸で今、注目のアタッカー 妻は元E-Girlsの美人モデル J1、ACLE、天皇杯と、3つの大会を並行して戦うヴィッセル。いまは24日間で7試合という過密日程に身を置くなか、タイトル獲得のための大事な試合が続いています。そんなチームのここまでの状況と、今後の見どころについて、16日放送のラジオ関西『GOGO!ヴィッセル神戸』にオンラインでゲスト出演したサッカージャーナリストの河治良幸さんに、同番組パーソナリティーの芥田愛菜美が話を聞きました。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 【芥田】 今シーズンのJ1開幕前にも出演いただきました。そのときの順位予想では、チームのパワーは1位か2位の強さがあるも、5位以内かなという話しもされていましたが……現状、トップ3に入っていますね!(※ヴィッセルはJ1で30試合を終えて、勝点55で3位) 【河治】 (予想が)当たってますね(笑)。ヴィッセルのプレーの強度や、一人ひとりの個の強さには素晴らしいものがありますが、(昨シーズンの)王者で、強いヴィッセルをどう倒すかという対策を対戦相手がやってくるので、新興勢力ながら首位のFC町田ゼルビア(勝点58)などに比べると、すごく厳しい立場に置かれています。そんな中でも、縦に速いサッカーだけではなく、ボールを持つときは持つ、動かすときは動かすというのを、90分の中で入れながら、なんとかここまできたかなと思います。 また、相手の隙をつきながら、得点を重ねるところでは重ねて、粘るところでは粘るというのもできています。90分のオーガナイズ、ゲームを進めるというところでは、リーグの中でもかなり上位だというのを、(直近のJ1第30節)セレッソ大阪戦(○2-1)でも見せていたと思います。 【芥田】 河治さんがいまのヴィッセルで注目している選手は? 【河治】 MF井出遥也選手です! プレシーズンのときのけがで復帰までだいぶかかってしまいましたが、復帰後はどんどん試合出場を重ねて(※今シーズンのJ1では16試合出場1得点)、ヴィッセルが厳しい状況のときほど、彼がリンクマンとして攻守にきいていますし、チャンスの起点にもなっています。先のセレッソ戦では、広瀬陸斗選手のゴールのとき、そこで起点となるような、宮代選手へのパスもありました。アシストやゴールなど直接数字になっていなくても、その前のところでの関わりが本当に素晴らしい。いまはヴィッセルの中でも大注目しています! 【芥田】 井出選手は、主導権を握られているときにもすごくポイントになる選手ということですが、具体的には? 【河治】 ボールを握って相手が引いてくるようなときに崩す一手というところもありますが、逆に押し込まれてから陣地を回復していけるというか、宮代選手みたいな突破というのではないのですが、ボールを運んで高い位置に起点をつくれる選手。あとはワンタッチでリズムをつくって大迫選手からの落としを展開したり。ほかの中盤の扇原選手やMF井手口陽介選手、MF山口蛍選手らとはまた違った味を出していると思います。 【芥田】 今のJ1上位戦線についてはいかがでしょうか。前節では、首位の町田が勝利、2位サンフレッチェ広島と4位鹿島アントラーズは直接対決が2-2の引き分けで勝点1を分け合いました。ヴィッセルは町田と3差の3位です。 【河治】 町田が粘り強いなと。浦和レッズ戦(J1第29節、△2-2)では最後の最後に得点してなんとか勝点1をとった感じで、そのときに勝利していた広島が逆転した状態になりましたが、今回は広島が勝ち切れず、町田は難敵のアビスパ福岡を3-0と一蹴。(優勝争いのゆくえが)わからないなと。ヴィッセルにとっても、純粋にリーグ戦だけでいえば、そのなかでも強いのかなと思いつつ、ここからACLEや天皇杯が残っているので、それらをどうこなすかというところ。ACL2(AFCチャンピオンズリーグ2)がある広島もそうですが、(アジアの戦いなどを含めた過密日程が)町田との大きな違いとして両チームにはあります。でも、ヴィッセルも広島も実績があるので、町田に簡単にとらせないぞというところを見せてほしい。 【芥田】 過密日程を迎える中、J1リーグ戦は残り8試合です。ヴィッセル連覇へのポイントは? 【河治】 J1とACLEとで、どういうふうにチームを編成していくかというところ。ピッチに立ったらみんな100パーセントでやるのは当たり前。ヴィッセルも、天皇杯を含めてタイトルを狙っていくと思いますが、そのなかでどうしても選手のやりくりをしていかないと、ずっと同じ選手が出続けるのは、今の試合間隔だとあり得ないこと。そこをどう切り抜けていくか、総合力が問われてきます。そうなると、前節のセレッソ戦でスタメンじゃなかった選手、ベンチ外だった選手も、ここからの終盤、キーマンになってくるのかもしれません。 【芥田】 ACLEで花開く選手も出てくるかもしれないというのは、新たな楽しみでもありますね! 【河治】 逆にACLEを利用するというのではないですが、そこで出てきた選手がリーグ戦の終盤戦にヒーローになるような、逆転の発想もできるので、いい意味で(過密日程を)とらえていくことがいいのかなと思います。 【芥田】 今シーズンからスタートしたACLEについて、大会方式が大きく変わりましたね。 【河治】 これまでは、(日本のいる)東地区でそれぞれ4~5グループにわかれて、上位1チーム、プラス各組2位のなかの何チームかが決勝トーナメントに上がっていましたが、今回からは(ACLE出場の)東地区12チームのうち、上位8チームが次のステージ(ラウンド16)に進むことになりました。ただし、トリッキーなのは、総当たりではないことと、ホーム&アウェイで試合をするのではなく、(相手との対戦も)ホームかアウェイかもあべこべなことです。Jリーグの仲間、横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、そしてヴィッセルで、(東地区の)対戦相手は変わらないですが、対戦の順番と、ホームかアウェイかが変わってくるので、これがどういうあやになるかというところ(が見どころ)。 どんどん同じチーム(顔ぶれ)と日本の3チームが対戦していくので、たとえばマリノスが対戦したチームのことを、ヴィッセルは次の対戦のときはわかっているわけ。ライバルでありつつ、ある種、(国ごとの)チーム戦というか。ヴィッセル、マリノス、フロンターレで、しっかりスカウティングしあって、対戦チームをわかっていきながら、上位を争い、なんとか3チームとも上の8つに入ってほしい。その先にはもしかしたら(日本勢同士の)直接対決はあるかもしれないですが。ACLEでは、ほかのチームが対戦した相手のことは、次に対戦するときは(分析して)わかっているので、普段のJリーグのライバルチームの戦いが、物差しになる。そういう意味ではすごくやりやすいのかなと。 【芥田】 参加報酬や、優勝報酬もすごいようですが……。 【河治】 これがとてつもない!(※優勝・参加報酬の総額は1200万ドル、日本円に換算すると約17億円!?) ここで勝ちあがって頂点にいけば、さらに世界にもつながっていきます。ヴィッセルとしては、Jの連覇ももちろん大事ですが、アジアの戦いをしっかり勝ち抜いてほしいです。 【芥田】 ACLEにおいて、初戦のブリーラム・ユナイテッド以外で要注意の相手は? 【河治】 蔚山HD(韓国)です。韓国でも最強レベルのチームで、身体の強いという韓国クラブの特長があるだけでなく、テクニカルにボールをつなぐこともでき、ヴィッセルとすごく共通するところもあるチーム。シンプルにどっちがチームとしてより強いのかという、ストロングな戦い、ぶつかりあいみたいにもなるのでは。その先にもつながるというか、ヴィッセルがアジアの頂点を狙ううえでも指標になる相手。蔚山に勝てなかったらリーグステージを突破できないというわけではないですが、そこでしっかり勝つ、いい戦いをすることが、その先にもつながるのかなと。 【芥田】 キャプテンの山口選手の負傷による長期離脱はつらいところもありますが……。総力戦のなかで、期待する選手は? また、メンバーの組み方でのポイントは? 【河治】 蛍選手に関しては、夏の補強も彼がいる前提でやっていたと思いますし、そうでなければ補強があったかもしれない。そこは難しいところ。ただ、いるメンバーでチャンスが出てくる選手もいると思います。そういう意味では(同じボランチが本職の)鍬先祐弥選手にはすごく期待しています。(過密日程では)完全なターンオーバーというより、スタメンのうちの半分くらいを入れ替えつつ、そこ(新たに出場した選手)がどうフレッシュさを出していけるか。また、残っている(続けて出る)メンバーが継続性みたいなものを出し、それらをうまく(ミックスして)やっていくのかなという気がしています。 【芥田】 ACLEについてはシーズンをまたがるので、チーム作りの難しさもあるのでは? 【河治】 Jリーグは春秋制なので、ACLEの秋春制とずれますし、ACLEは今年で完結せず来年へ続きます。Jリーグは終盤戦を迎えることもあり、そこのやりくりの難しさについては、ヴィッセルとしても初体験で、未知数のところもあり、怖さもあるのかもしれませんが、それも含めて楽しめればいいのではないかと思います。 ※ラジオ関西『GOGO!ヴィッセル神戸』2024年9月16日放送回より
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