水素市場規模、前年比12.4%増の265億円
本紙が2024年の水素商材の市場動向について調査した結果、市場規模は前年比12.4%増の約265億円(メーカー出荷金額ベース)と、2年連続での2ケタ成長となったことがわかった。ここ数年の成長株である水素吸入器が同37.5%増の約55億円と大幅に伸びたほか、水素サプリ・コスメ等も約25%伸びた。主要販売チャネルの対面販売ルートがコロナ前の水準に戻ったこと、エステサロンや理美容室などでの水素人気の再燃をはじめ、美容マーケットへの浸透、海外輸出の伸長なども追い風となり、主要メーカーの7割以上が増収を達成。水素商材市場は、これまでのピークだった2016年以来の300億円の大台が目前に迫ってきた。 ■6年連続の市場拡大 本紙では水素商材の主要メーカーへの訪問取材および、取り扱いメーカーへのアンケート調査を実施。43社から回答を得た。主要企業の売上高の合算および増減率をもとにした2024年の水素商材の市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、推計で265億4,000万円(前年比12.4%増)となり、6年連続で市場は拡大、2年連続で2ケタ成長を達成した。 ここに日本トリムやパナソニックなどがアルカリイオン整水器(電解水素水整水器)として販売する管理医療機器を加えると、450億円前後の市場規模と推計される。 ■水素吸入器、55億円市場に拡大 2024年の経営状況について、「良かった」と回答したメーカーは、昨年調査より14.6ポイント増の58.1%。2024年に増収を達成した企業は同12.1ポイント増の75.7%だった。 今回の取材から、2024年に好調だったアイテムをピックアップすると、ここ数年の成長株である水素吸入器が前年比37.5%アップした。メーカー出荷金額ベースでは、昨年の約40億円から、今年は約55億円に拡大した。大型機種は医療機関や治療院などの業務用としての導入が進んでいる。医療機関も内科や外科、循環器内科をはじめ、心療内科や婦人科、歯科、眼科、睡眠外来など、広がりが見られた。 また、一般家庭でも使用可能な中型タイプや卓上タイプは、小規模のエステサロンや理美容室などに業務用として導入が進んでいる。加えて、こうした施設での吸入体験を通じて、患者や会員など一般消費者への販売量も徐々に増加している。 水素サプリメントや水素フェイスマスク、水素ヘアトリートメント、水素入浴料など、消費材の売れ行きも好調をキープ。前年比で約25%伸長した。OEM企業の話では、医療機関向けに水素にNMNや5-ALAといった成分と組み合わせたサプリメントの開発ニーズ、大手・有力販売メーカー向けのOEM案件が増加しているというコメントが複数聞かれた。水素コスメは、理美容室の業務用・物販用、エステサロンの物販用を中心に売上を伸ばしている。 サプリやコスメに用いられる水素発生原料のサプライヤー各社の業績は、ほとんどが前年比を上回っており、なかには前年比60%増といった企業も見られた。また複数のサプライヤーから、「健康食品・化粧品の大手OEM企業から、水素発生原料のサンプル依頼も増えている」といったコメントも聞かれた。 「水素分子」で初の機能性表示食品受理実績を持つ新菱では、大手企業からの水素ゼリーのOEM案件に加え、水素ガスをゲル・クリーム等に封じ込めた化粧品のOEM事業でも、有名化粧品メーカーのヘアケアブランドに、水素ヘアトリートメントが採用された。来年向けての商談も多いとのこと。 他にも、レンタル水素水サーバー、ハンディタイプの水素水生成器、電解水素水整水器など、家庭で手軽に、できたての水素水を生成するアイテムも好調をキープした。また、フィットネス・スポーツ施設に設置されている自販機型水素水サーバーを介した水素水の売上も、コロナ収束を受け、回復傾向が見られる。 ■美容・ペット市場に注目 2024年に水素商材の売れ行きが好調だった販売チャネルは、対面販売ルートと施設関連。対面販売ルートでは、前述の水素吸入器以外にも、水素水生成器や水素浴装置、水素サプリ・コスメなどの売れ行きも良かった。施設関連では、医療機関や治療院に加え、エステサロンや理美容室といった美容施設での売れ行きが伸びた。 エステサロンや理美容室の中には、コロナ禍の集客減少で大きな打撃を被ったところも少なくない。各店舗とも生き残りを掛けて、物販や付帯サービスで客単価を上げる取り組みを推進する中、そのアイテムの1つに水素商材が選ばれている。サブスクを活用して水素吸入をさせながらの施術、水素フェイスマスクや水素ヘアトリートメント、水素サプリメントなどの物販商材を仕入れるサロンが増加している。 今年5月のエステ業界最大の展示会では、久々に水素商材を出品する出展社が複数見られた。出展社への取材でも、「エステ業界で水素の人気が再燃している」との回答を複数得た。 今回の取材・アンケートからも、中型や卓上型の水素吸入器を扱うメーカー、水素サプリメントや水素コスメ、水素入浴料のメーカー、OEM企業、原料サプライヤーの多くが、エステサロンへの導入・販売が進んでいると回答している。市場ボリュームの大きい美容マーケットへの展開は、水素商材にとっても市場拡大のチャンスとなるだけに、今後の動向に注目される。 今回の調査では、ペット市場での展開について回答するメーカーが複数見られた。動物病院やトリミングサロンへの水素吸入器や水素水生成器、水素浴装置、水素水サーバーの導入、また飼い主への水素商材の販売が好調といった回答も複数見られた。 ペットが家族の一員として大切に扱われる時代だけに、ペットにお金を掛ける飼い主は少なくない。ペット自体も高齢化が進む中、ペット向けのケア市場に水素商材がどこまで食い込めるかにも注目だ。 ■6割が「輸出実績あり」 また国内市場に加えて、海外市場への展開にも注目される。今回、海外輸出実績について聞いた調査では、「輸出実績がある」との回答は、昨年調査より1.6ポイント増の58.1%だった。輸出実績のある国・地域(複数回答)は、今年もトップは中国で、台湾、米国、タイ、マレーシアが続いた。スペインやポーランド、英国などの欧州地域、ドバイやサウジアラビアなどの中東地域に輸出実績を持つ企業も見られた。輸出先の国・地域が世界中に拡散していることがうかがえた。 輸出実績のある企業に今後の輸出の見通しを聞いた調査では、「さらに伸びる」との回答が昨年調査より5.5ポイント増の65.5%となっており、今後はグローバルなビジネス展開にも期待される。 2025年上期の経営見通しについては、6割以上のメーカーが「良くなる」と回答。水素商材市場は、2016年以来となる300億円市場の大台が、いよいよ射程圏に入っている。