シンガポールで日本人初の「鞭打ち刑」判決、「外国人にも厳しい処罰」アピールか
シンガポールで女性に性的暴行を加えたとして強制性交罪などに問われた日本人男性の裁判で、「鞭打ち刑」を科す判決が言い渡されたと報じられて、国内外で話題になった。 【写真】レイプドラッグの卑劣な実態 シンガポールでは、裁判所の令状がなくても逮捕、捜索差押えができる場合があるなど、日本に比べて警察の権限が強力であり、日本の刑事司法制度とは大きく異なっている。シンガポール在住の弁護士に聞いた。
●「残酷」「日本でも導入を」
報道によると、2019年に地元の女子大学生に性的暴行を加えた他、その様子を撮影して友人に送るなどしたとして、シンガポール高等裁判所が7月1日、元美容師の日本人男性に対して、禁錮17年6カ月、鞭打ち刑20回の判決を言い渡したという。 これが報じられると、日本では「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」(憲法36条)として禁じられていることもあり、先進国であるシンガポールにおける「鞭打ち刑」の存在がクローズアップされた。 SNS上では「普通に前近代的で残酷な刑罰」と拒否反応を示す投稿だけでなく、「日本も性犯罪はこれくらい厳しくしていい」「性犯罪者が裁かれる社会なのが心底羨ましい」など受け入れる声が大きく広がった。 シンガポールに在住し、現地法に詳しい栗田哲郎弁護士によると、シンガポールの刑事司法制度は厳格で、日本では軽微な罪として捉えられる行為であっても逮捕・起訴されることがあり、執行猶予が認められることは原則なく、いきなり実刑に処されるケースが多いという。
●更生より厳罰による犯罪抑止
たとえば、落書きや立小便などのシンガポールの景観を害する行為であっても、現地では執行猶予がほぼ認められないため、悪質な場合は、初犯でも有罪となれば、いきなり刑事施設に収容されることもあるそうだ。 「警察の捜査権限が強大」であることは、在シンガポール日本大使館が公表している資料でも強調されており、無令状での逮捕権限や捜索差押権限が与えられ、至る所に監視カメラが設置され、捜査にも活用されている。 「シンガポールの刑事司法制度は、犯罪に対して厳しく臨むという政府の方針が強く打ち出されたものになっています。原則として、被告人と被害者との間で事件終結のための任意での示談が許されていないことなども特徴です。日本と同レベルの被疑者の黙秘権や弁護士との接見交通権が許されていないなど、日本とは異なる点が多数あります。 また、日本では再犯防止のために更生の機会を与えるという考えですが、良くも悪くもシンガポールでは厳罰で犯罪を抑止するという考えです。汚職にも厳しく、独立した汚職調査局 (CPIB) により政府高官や企業幹部を含む全ての市民が厳格に監視されます。CPIBが強力な調査権限を持ち、疑わしい活動や賄賂の受け取りに対して徹底的に取り締まりを行います」