ドル高は世界経済のテーマになるか?
【これはnoteに投稿された唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト)さんによる記事です。】
ドル円相場は遂に155円を突破しました。色々な思惑や議論が浮上しているようですが、通貨政策はあくまで政治マターだと思いますので筆者から何かか所感を述べることはいたしません ※今回は時間軸が短く、カレントなテーマでもありますので全文お読み頂けるようしてあります: 【円、34年ぶり155円台に下落 高まる介入警戒感】 ※ここに貼られていた記事のURLは【関連記事】に記載しています 「技あり」の日米韓声明 ただ、先週は通貨政策という政治の世界において少し驚きを覚える動きがありました。それはワシントンで4月17日から始まったG20財務相・中央銀行総裁会議にあわせて開催された日米韓財務相会合です。同会合では「最近の急速な円安・ウォン安への日韓の深刻な懸念を認識し、外国為替市場の動向について引き続き緊密に協議する」と盛り込んだ共同声明をまとめました: 【財務相、日米韓「緊密に意思疎通」 円・ウォン安合意で】 ※ここに貼られていた記事のURLは【関連記事】に記載しています 通貨安に悩む隣国を巻き込んだ上で米国と連名で声明文を採択するのは目新しいアプローチであり、介入警戒感からドル/円相場は一時的ながら押し下げられました。多国間の合意形成を待たず仲間を見つけて巻き込んだ上で情報発信するという一手は「技あり」という印象を受けます。 国際協調にはまだ機は熟せず もっとも、変動為替相場制の方向感は米国の通貨・金融政策の望む方向にどうしても規定されるものです。結果、冒頭でご紹介したような水準を付けるのも不可抗力でしょう。現状、米国経済が抱く最大の問題意識がインフレ抑制で、そのためにはドル安よりもドル高の方が望まれる状況がある以上、「国際協調でドル高を修正する」というプラザ合意的なアプローチは発展しづらい。また、そうした米国側の事情に加え、米国以外の事情を見渡しても国際協調に至るほどの熱はまだ帯びていないように見受けられる。 例えば今回は同じ東アジア通貨の中で下げの大きな2通貨として円と韓国ウォンがタッグを組んだ格好ですが、年初来で韓国ウォンは確かに下げているものの、近年という意味では円ほど強烈かつ持続的な通貨安に悩んでいるわけではありません: