「もしトラ」への備え?習近平氏「5年ぶり訪欧」の思惑 なぜフランス、セルビア、ハンガリーだったのか
なお、今回訪問先となっていないドイツは今年4月、ショルツ首相が財界トップを引き連れて訪中したばかり。昨夏、中国経済への依存度を減らす「デリスク」(リスク低減)の戦略を打ち出してから初の訪中だったが、経済関係の強化を確認するだけにとどまっている。 ■国交樹立60周年で国賓訪問した習氏 最初にフランスを国賓訪問した習氏は、仏中国交樹立60周年を祝う式典に参加した後の記者会見で「第1に二国間関係の戦略的安定を強固にすること。第2に双方向投資の拡大のための良好なビジネス環境を提供すること。第3に人的・文化的交流の促進を加速させること。第4に環境問題などグローバルな協力に向けたより大きなコンセンサスを構築すること」で合意したと表明した。
一方、フランスにとっては不公正な貿易慣行の解消、ロシアとの「無制限のパートナーシップ」の転換に期待していたが、習氏の口からは、コニャックに専制関税を課さないこと、マクロン氏が提案しているパリ五輪・パラリンピック期間中のウクライナ紛争の停戦に支持を表明するにとどまったが、そもそも停戦はロシア次第で可能性は低い。 またウクライナ問題に関しては、中国はロシアに武器を供与していないこと、そして軍事品輸出の厳格な管理を公に表明していることから、「ウクライナ危機を利用して責任を押し付け、第三国を中傷し、新たな冷戦を扇動することにわれわれは反対する」(習氏)と従来の主張を繰り返すだけだった。
■セルビアとの関係は一帯一路の打開策 フランスの次に訪問したセルビアは、旧ユーゴスラビアの中心国家だったが、東西冷戦終結後も周辺国との対立が絶えない国だ。2014年にEU加盟候補国となっているが、成熟した民主主義や人権重視のハードルが高く、EUへの加盟を果たせていない。 セルビアの直接投資流入額に占める中国からの投資額は2020年以降、増加し続けており、2020年は5.3億ユーロ(約870億円)、2021年は6.3億ユーロ、2022年には13.8億ユーロへと急増し、2023年には10.9億ユーロに減少したが、2024年には増加に転じると見られている。