変化恐れず、鍛錬忘れず「自ら努め励む」 21世紀国際書展中国大使館文化部賞の森玉桂さん
7月10日に開幕する「第39回21世紀国際書展」(主催・産経新聞社、21世紀国際書会)の授賞式を前に、特別大賞に選ばれた4人の横顔を紹介する。中国大使館文化部賞の森玉桂さん(58)は、書への探求心が尽きない。変化も恐れない。同じ字を書いても、1つとして同じものはない。そんな書の面白さに魅了され、いまも成長を続けている。 ■師の教え、環境に恵まれ 受賞作となった「自彊(じきょう)」は、昨年、何かをみていてふと「良いな」と感じた言葉だ。調べてみると、「自ら努め、励むこと」という意味だと知った。書いた時の収まり具合と言葉の意味。いつかは書いてみたいと考えていた作品だった。 これまでの歩みを振り返った時、師の教えや書に向かう環境に恵まれたと感じているという。 小学生のころから日本書道学院の書道教室に通い、野浦玉舟(ぎょくしゅう)事務局長の指導を得た。中学、高校とあがるにつれ、通う時間も限られた。でも、やめようと思うことはなかった。 「高校生の時には、学院2代会長の大西松雲(しょううん)先生(故人)がご指導されている夜の時間に変更しました。そのころから私にとって習字が書道になったように思います」 切磋琢磨(せっさたくま)を続ける中で、恩師はよく話しかけてくれたという。 「松雲先生は書のご指導に加え、よく色々なお話をしてくださいました。今思えば、書くことも大事だが、会話の中から何かを掴(つか)んで欲しいという思いがあったのではないかと思います」。展覧会への出品を経験するようになり、作品の題材やつくり方について自ら取り組むことも認めてくれた。「野浦先生や小山司雲(しうん)先生(故人)からは『もっと自由に書きなさい』とアドバイスを受けました。今も胸に残っています」という。 ■作品の題材集めは日々の生活の中で 「如魚得水」(魚の水を得たるが如し)。自らが活躍できる場所を見つけたり、自分にふさわしい環境を得て、生き生きと活動したりすることを表す中国の故事成語だ。書の基本をしっかりと学ぶ一方で、創造力を発揮できる環境を得て、力量は大きく向上した。 書への探求心も育んだ。今回の作品「自彊」を日常生活から見つけたように、作品探しを日々の生活の中に落とし込んでいる。「作品の題材集めは、日々の生活の中で、本や新聞、またはテレビの一場面を見ていて気に行った言葉などをすぐにメモに取り、意味を調べることを大切にしています」。何気なくテレビでドラマを見ていた時、金庫が開けられる場面があり、扉の裏側に書かれていた言葉が目を引いた。すぐにメモを取り、意味を調べた。