逝った弟の分まで 「レモネード」で小児がん支援を 患者の「きょうだい児」14日販売/兵庫・丹波篠山市
小児がんの子どもたちのためにと、兵庫県丹波篠山市や大阪府豊中市で暮らす小児がん患者のきょうだいたちが14日午前10時―午後4時、「立杭陶の郷」(丹波篠山市今田町上立杭)で「レモネードスタンド」を開く。本番まで数日に迫った9日朝、活動のきっかけとなった患者の少年が他界。本人も現場に立つという目標はあと一歩、叶わなかった。悲しみの中、それでもきょうだいは、「弟も本当に楽しみにしていた。その気持ちの分まで頑張りたい」と言葉を絞り出し、協力を呼びかけている。 小児がん支援のレモネードスタンドは、アメリカの小児がんの少女と家族がレモネードを販売した売り上げを、治療薬の研究費として寄付したことをきっかけに世界中に広まった活動。「試練=酸っぱいレモン」を「良いもの=おいしいレモネード」に変えていこうという思いが込められている。 今回は手作りしたレモネードを販売し、その売り上げは、小児がんや難病を患う子どもたちがゆったりと家族との時間を過ごす施設「TSURUMIこどもホスピス」(大阪市)に寄付する。 活動のきっかけとなったのは、9歳の時に10万人に1人とされる脊髄腫瘍を発症したテイムジョージさん(11)=丹波篠山市=と、5歳の時に神経芽腫を発症した土井大地さん(13)=豊中市=。 ジョージさんは手術と抗がん剤治療を経て治療薬が見つかり、現在、治療中。大地さんは一度は寛解したものの9歳の時に再発し、抗がん剤や免疫治療などの長い闘病生活を送っていたが、9日朝、この世を去った。 共に大阪市立総合医療センターで治療に励んでいることや、土井さん一家が、テイムさん一家が暮らす丹波篠山に遊びに来ていることを交流サイト(SNS)で発信していたことから連絡を取り合い、家族ぐるみの交流につながった。 病気や障がいのあるきょうだいを持つ子ども「きょうだい児」は、親がそちらにかかり切りで我慢が多かったり、不安や寂しさがあったりと特有の悩みを抱えることがある。今回も闘病生活が続いていた大地さんの兄、颯大さん(16)の「弟が闘病しているのに、自分が普通に過ごしていいのか」という思いが端緒にあり、患者たちのために活動することで、支援にもつながり、自分の気持ちも軽くなると考えた。 ジョージさんの兄、ゲイブリルさん(17)と姉のグレースさん(13)も賛同し、レモネードスタンドの売り上げは大地さんが利用していたこどもホスピスに寄付することにしていた。 昨年、日本六古窯の一つで、日本遺産にも認定されている「丹波焼」の産地に移住してきたテイムさん一家。多くの人でにぎわう「丹波焼陶器まつり」が開かれる時期に、自宅前でレモネードスタンドを開こうと考えていた。すると、ジョージさんの病状や小児がん支援の取り組みを本紙で知った近所の人が、「主催者に相談してみては」と助言。丹波立杭陶磁器協同組合の市野達也理事長に打診したところ組合から快諾され、まつりのメイン会場、陶の郷で販売できることになった。 9日、大地さんの旅立ちを見守った颯大さん。大地さんは初めてのレモネードスタンドを楽しみにしており、「たくさん人が来てくれるかな」と期待を寄せていたとう。颯大さんは、「楽しみにしていた大地の気持ちの分まで、少しでも支援の輪、そして笑顔が広げられるよう頑張りたい。小児がんと闘う子どもたちとその家族の励みと希望につながるので協力してほしい」と呼びかける。 ゲイブリルさんとグレースさんも、「大変な治療をしている子どもたちが、少しでも楽しい笑顔の時間が過ごせるよう。一人の力は小さいけれど、たくさんの力が集まればきっと大きな力になる。小さな子どもの笑顔を思い浮かべてほしい」と話している。 レモネードは1杯400円程度で販売予定。黒豆パンや雑貨なども販売する。