路線変更でイグ・ノーベル賞 始まりは「肺を作ろう」
【ケンブリッジ共同】イグ・ノーベル賞に選ばれた東京医科歯科大教授の武部貴則さんのチームで、腸呼吸の実験にいそしんだのは外科医の岡部亮さんだった。2016年に京都大の大学院に入った。肺移植に取り組む研究室だ。移植を待つ患者が提供者と巡り合えず亡くなっていく。命をつなぐ方法はないだろうか―。路線変更を経て、成果を手にした。 「肺を作ってしまおう」。さまざまな種類の細胞に成長できるiPS細胞から小さな肝臓を作った武部さんが肺の組織作製に挑んだ論文を読み、研究室で紹介した。周囲には臨床家が多く、基礎研究への反応は薄め。だが講師だった芳川豊史さんが「面白いね」と乗ってくれた。一緒に武部さんへ共同研究を持ちかけたところ、返事は「やりましょう」だった。 ただ、肺は数十種類の細胞でできた複雑な臓器で作製が難しい。武部さんには短期間で患者を救う段階まで行けるとは思えなかった。岡部さんに「うまくいかない時のため、もう一つ面白いテーマをやるのが普通ですよ」とアドバイスした。