フリーアナウンサー・神田愛花『増していく、苦手なコト・モノ。』
昔より苦手になったこと
皆さんは、「昔より苦手になったコトやモノ」はあるだろうか? 私にはいくつかある。 まずは、ユリの存在。38歳の誕生日の前後、立派なユリが2本入った大きな花束を頂戴し、リビングに飾ったら、手首と肩の辺りが痒くなりはじめ、小さなブツブツが出現した。他に何かに触れたり食べたりはしていない。花束を飾ったことだけが、家の中での唯一の変化だった。それまで、花でアレルギー反応が出たことはなかったので不思議に思ったが、痒みが止まらないので仕方なく花束を処分した。すると、症状がおさまった。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~62回)はこちら 数日後、再びお誕生日プレゼントに花束を頂戴した。すると、また手首と肩に痒みとブツブツが発生。花束にはユリが入っていた。試しにユリだけを処分すると、案の定すぐに症状がおさまったため、原因がユリだと確定。ユリは初夏~夏の花で、私の誕生日である5月下旬は花束に含まれやすい。申し訳ないが、ユリが入っていると迷わず取り除いてから、飾らせていただいている。 続いて、枕のにおい。旅行好きの私は、これまでいくつものホテルや旅館に泊まってきた。宿泊先の枕を使っていて何も問題なかったのだが、40歳を過ぎた頃から急に、自宅の寝室のにおいがする枕でないと、寝られなくなってしまった。なぜオバサンになった今の鼻のほうが、匂いに敏感になっているのだろう。 宿の枕が変なにおいがするというわけではない。どういうわけかどんなに疲れていても、寝るまでに1時間以上かかるか、夜中に何度も起きてしまうようになった。自分の睡眠を分析してみると、私は横向きで寝ることが多く、鼻と枕の距離がとても近い。″寝ている時に呼吸をする=枕のにおいをガッツリ嗅ぐ行為″ということに気が付いた。 そこで出張の際、試しに夫が毎日使っている自宅の枕カバーを剥がして持って行き、ホテルの枕の上にそれを敷いて寝てみた。すると、驚くほどすぐに寝られ、朝まで一度も起きなかったのだ。いつものにおいだと安心し、張っていた気持ちが和らぐことを実感した。 我が家の寝室は、夫のにおいが主役として存在している。今では夫の枕カバーを洗う頻度を減らし、いつ外泊があっても大丈夫なように、日頃からたっぷりと、においをつけさせている。そして、たった一泊の国内出張も、長期の海外旅行も、においが抜けないようにビニール袋に入れて持って行っている。 ◆行けなくなってしまった夜の街 最後は、夜遊びだ。堂々と言うことではないが、堂々と人に言いたいくらい、私は夜遊びが大好きだった。大学生の頃から、夜遊びが趣味だと言える大人になりたかった。「夜は危ないから行っちゃダメ!」と言われるような、銀座・六本木・歌舞伎町などで、ビクビクせず、街を自分流に使いこなすことこそ、″デキる大人″だと信じていたからだ。 ただし、それらの街でもクラブに行ったり異性と交わったりはしない。カラオケや居酒屋で友達とフツーに朝まで語り合う。街のパワーに流されたり圧倒されず、いつもの自分をフツーにやってのけている瞬間に、「生きてるー!」と実感できた。 だが、結婚してから急に夜遊びが怖く感じるようになった。伊勢丹新宿店でお買い物をし、気が付いたら閉店の20時になっていたことがあった。昔なら(おぉ! いつの間に。じゃあ夜の新宿をちょっとお散歩でもして帰りますかぁ!)と、ネオンの中のさまざまな人間模様を観察しながらワクワクしていた。だがここ数年は、(ヤバイ! こんな時間になっちゃった。酔っ払いに絡まれたら怖いから早く帰ろう。ネオン街の近くは避けなきゃ)と考え、一目散に帰ってしまうのだ。 山手線に乗る時でさえ、変化が。昔はどの時間帯に乗っても何も感じなかったのに、今は夕方以降に五反田~池袋間に乗ると、飲みに繰り出すテンションが高い若者が多くて、怖いのだ。私もそっち側の人間だったはずなのに。 知識が増えて、より一層自分の身は自分で守れるようになった。ナンパもされなくなった。若い頃のほうが危険と隣り合わせだったはず。なのに、なぜ今は夜が怖いのか。これに関しては原因がわからず、自分が情けなくて、悲しい。皆さんはどうだろう。 かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年9月20日号より イラスト・文:神田愛花
FRIDAYデジタル