陸奥湾ホタテ、10年後300億円産業に 青森県が初の「総合戦略」公表
青森県は1日、陸奥湾養殖ホタテガイの安定生産と成長産業化に向けた「総合戦略」(2024~34年度)を初めて策定、公表した。「生産高度化」「経営力強化」「販売促進」を3本柱に掲げ、十分な親貝の確保、協業体制の構築、輸出額の倍増などに取り組む。年間の生産量8万トン、生産額100億~150億円を維持できる体制を確立し、10年後に加工を含めて300億円規模の産業を目指す。 陸奥湾ホタテを巡っては近年、高水温による大量死や中国への禁輸措置などが課題となったことから、県は昨年9月、産学官のチームを設置し、戦略策定へ協議してきた。 生産高度化では、高水温で激減した親貝を23年度の7千万枚から、安定生産に必要な目安である1億4千万枚に倍増させる目標を設定。実現に向け、親貝数の下限を設定して各漁協に割り当てるほか、漁協や業界団体で親貝確保に向けた協定を結ぶ。産卵期の成貝出荷を抑制した場合の損失を補填(ほてん)するため、基金を常設する。高水温に対応した養殖技術の研究も進める。漁場の観測ブイ増設は、来年度予算に組み込めるよう検討している。 経営力強化に向けては、生産者の減少を補うため、協業作業を行う経営体の割合を24年度の24%から50%に増やす。年間生産額100億円達成へ、1経営体の生産額を970万円(24年度見込み)から1280万円に引き上げる。マガキなど新たな養殖魚種の導入も進める。 販売促進では、ベビーホタテの家庭向け商品化などで加工品生産額を174億円(21年度)から231億円に増やす。海外市場の販路を拡大し、中国以外への輸出額を15億円(22年度)から31億円に倍増させる。衛生管理の国際基準HACCP(ハサップ)に対応した施設も整備する。 県は11月中旬以降、漁業者に総合戦略を説明し、理解と協力を求める方針。 1日に県庁で記者会見した宮下宗一郎知事は「ホタテが300億円を目指せる産業だということを県民に理解してもらい、携わる人には地域経済を支えている誇りを持ってほしい。関係者一丸となって取り組むきっかけになることを期待したい」と述べた。