<南アフリカ>永遠のヒーロー ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
南アフリカの父、ネルソン・マンデラ。「マディバ」と尊敬をこめた愛称でよばれた彼を抜きにこの国の歴史を語ることはできないが、僕にとっても、決して忘れることのできない人物でもある。全人種参加選挙、そして勝利したマンデラ大統領の就任式は、僕がカメラマンとして初めて経験した歴史的大ニュースの舞台になった。就任式の会場で、肌の色の違いをこえ手をとりあった何万もの国民達の、その圧倒的な「希望」のエネルギーに胸をうたれた僕は、ファインダーを覗く目から溢れ出る涙を抑えることができなかった。それから8年後、再び出会ったマディバは、以前と変わらぬ、自信と強さを秘めながらも、人懐こいあの笑顔をみせてくれた。 政治犯として27年もの年月を獄中で過ごしながらも、アパルトヘイト撤廃に向けて一貫して戦い続け、釈放後は国を背負って休むことなく歩き続けた。 一昨年、マンデラは95歳でその生涯を閉じたが、多くの南アフリカ人たち、そして市井のカメラマンである僕にとっても、彼がヒーローであることはいまも変わることはない。