よりアクティブな人生を ~人工関節の技術革新で広がる選択肢~
人工関節の機械的耐久性はかつて10~20年程度といわれ、手術後における患者さんの負担もあったので「人工関節置換手術は原則1回、70歳前後にタイミングを見て」とされていました。これは、仮に人の平均寿命を80~85歳、人工関節の耐久性を約15年とした場合、70歳前後に手術を受けた方が人工関節を再び取り換える再置換手術の可能性が低くなるという考えに基づいていました。これまで再置換手術に関しても、加齢による骨の劣化、体力の低下やリハビリの難しさなどから「あまり勧められない」との考え方が主流でした。しかし、近年の人工関節の技術革新により、状況は大きく変化しています。
20~30年間使用もOK
1990年代以降、人工関節の製造技術の進歩に加え、改良を重ねて耐久性や安全性は目覚ましく向上しました。また、人工関節のデザインや形状の適合性や材料の表面処理技術の進歩によって、骨との固着性能も格段に良くなりました。さまざまな技術革新によって、現在では通常の生活を送っている人の場合は平均20~30年間の使用にも耐えられるようになりました。 50~60代はもちろん、40代でも生活レベル向上のために人工関節に置換する人が増えています。平均寿命は今後も延びると見込まれており、70歳以上であっても社会活動や趣味、スポーツなど積極的に活動したいという人が増加しています。そんな事情を反映してか、90歳以上で手術を受けられる方もいらっしゃいます。 こうした状況により、現在日本では1年間に約10万5000件の人工膝関節、約8万5000件の人工股関節が埋め込まれており、10年前と比べると、手術件数は1.5倍程度まで増加し、今後も右肩上がりに上昇することが予想されます。 朗報を紹介します。個々の患者に最適な形状や特性を発揮できる超長寿命型カスタマイズド人工関節の研究開発が、国家プロジェクトとして進められており、近い将来の導入が期待されています。