U-23アジアカップ制覇のウラで焦りも…松木玖生が明かした「自身の力不足と海外移籍」への思い
カタールのドーハで行われたU-23アジアカップ。U-23日本代表はパリ五輪出場権を獲得し、アジアチャンピオンにも輝いた。 【栄光をもう一度】鳥肌もの…優勝カップを掲げる「U-23日本代表」歓喜の瞬間 歓喜に沸く代表メンバーのなかで、淡々と大会を振り返った選手がいる。攻撃陣の中心選手として期待の高かった松木玖生(くりゅう・21)は、大きなインパクトを残すことはできなかった。決勝のウズベキスタン戦後の取材エリアではほとんどの選手が手放しの喜びを口にしたが、松木はあくまで淡々と試合を振り返った。 「すごくタフな日程ではありましたけど、これを勝ち切れたことはすごく大きいことだと思います。自分のコンディションは……初戦に得点を決めましたけど、残り5試合決めることができなかったので、自チームに帰ってさらにタフさを身につけた状態でパリに臨みたいかなと」 優勝直後とは思えない落ち着きで、課題とともに大会を振り返った。 ’01年1月1日以降生まれが出場することのできたU-23アジアカップだが、松木は’03年4月生まれ。今大会に臨んだ全23人の中では3番目に若い。所属するFC東京では高卒で加入した’22年シーズンに開幕スタメンに抜擢されると、即レギュラーをつかみ、注目を浴びた。その後も継続的に活躍を続け、今季はプロ入り3年目ながらキャプテンを務めている。球際の強さ、ボール奪取の能力、展開力といった特徴を持つ松木は、華麗なタイプではなく泥臭く力強いプレーでチームに貢献するタイプだ。 今大会では全6試合に出場したものの、フル出場は初戦の中国戦の1試合のみで、1得点に止まった。メンバーのローテーションもあったが先発出場4回、途中出場2回。準々決勝カタール戦では前半にイエローカードを受けたこともあり、ハーフタイムに交代。決勝でも相手のプレッシャーが強く攻撃面でなかなかボールに絡むことができなかったこともあり、62分という早い時間帯に退くことになった。こうした数字だけを見ても、パリ五輪出場権獲得や、優勝というチームとしての結果は得たものの、松木個人にとって満足のいく大会とはいかなかったことがうかがえる。歯切れが悪くなるのも自然なことかもしれない。 劇的な展開となった決勝戦も、松木は優勝の瞬間をベンチから眺めることしかできなかった。実際に試合を振り返っても、 「どっちに転がっても分からないような試合だったと思うので、こういった試合でやっぱり先制点を決めるところだったり、相手が自分たちの予想と違ったときに自分たちがどう解決できるか(が大事になってくる)」 と、自分の出ている時間帯に試合を動かすことができなかったという反省が、先に口をつくようだった。 今後目指すのはまずはパリ五輪メンバーに選出されること。五輪チームは今大会の23人からグッと少ない18人という狭き門。しかも、そのうち3人はオーバーエイジの選手が招集される可能性が高いことを考えると、実質15人の枠を奪い合うことになる。 「(ウズベキスタン戦で)交代した選手がああやって活躍してくれるというのは、本当にメンバーの層の厚さだと思いますし、こういった選手たちが、今後パリに向けてライバルになってくるので、ライバルでありながらしっかりと相手を尊重して、自分自身もさらにプレーを磨いていけるようにしたいと思います」 今はチームメイトであり仲間ではあるものの、メンバー争いという観点からすればライバルになってしまう。勝たなくてはいけない好敵手たちに松木はどう立ち向かっていくつもりかと尋ねると、こう即答した。 「まあ、とりあえず自チームで結果残すしかないかなというふうに思ってます」 松木といえば、高校時代から海外挑戦を公言してきた選手だ。今から約2年半前、U-19代表の海外遠征で筆者が取材した際も海外挑戦、移籍への思いを口にしている。 「僕、早いうちに海外に移籍するつもりでいます。毎回、こういう海外での合宿にくると刺激があるんです。日本では味わえないようなサッカーをしてくるし、より海外でプレーしたいと思うようにもなります」 だがプロ入り3年目の現在、海外移籍はまだ実現していない。かつては「自分の名前を世界に広げたい」と話していたこともある。取材エリアで反省を口にする松木の表情からは、そんな現状への焦りが見てとれた。 名門クラブがひしめき合う欧州で開催されるパリ五輪出場は、関係者からの注目度も高い。元日本代表主将の吉田麻也(35)はロンドン五輪で注目を浴びたことがきっかけでオランダのフェンロからプレミアリーグのサウサンプトンに一足飛びに移籍が実現した。松木にとっても逃したくないチャンスの一つだ。噂レベルの報道は数多くあるが、まずはFC東京での戦いに専念することが五輪メンバー入りとその先に繋がっていくだろう。 取材・文:了戒美子
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