モデルと女子ボクシング 二刀流は成立するか?
今パリコレのステージに立っていてもおかしくない。見事なまでの9頭身にエキゾチックな美貌。長いマツゲと、ボクシングジムにあるまじき美脚。身長は177センチある。
だが、バンテージを巻いてグローブに拳を通すと、その槍のように長い腕は、女子ボクサーの中では、異彩を放つ武器となり、トレーナーの持つミットに快音を残す。数多くのミスジャパンに選ばれてきた現役のスーパーモデル、高野人母美(たかの・ともみ=26歳)は、2戦2勝のプロボクサーという、もうひとつの顔を持っている。9月30日、後楽園ホールでプロ3戦目のリングへ。相手は、アマ経験しかないファイタータイプのフィリピンボクサーだが、「前の試合で悔しい思いをした。今度はKO勝利を宣言したい」と勇ましい。 ■観客からの強烈なヤジの洗礼 彼女の言う“前の試合”とは、判定勝利に終わった7月25日のヨッカオ・ローエイシティジムとの試合。日本フェザー級王者、天笠尚の試合を見て、ボクシングを始めるきっかけとなった聖地、後楽園のリング、しかも、藤本京太郎対オケロ・ピーターの日本ヘビー級王座決定戦のセミカードという舞台に極度の緊張に襲われた。消化不良のボクシング。だが、その試合内容よりも悔しかったのが、試合後に浴びせかけられた容赦ない野次。 「モデルやっとけ! ボクシングなんかやめちまえ!」 確かにプロ2戦目でテクニックは拙く、まだ話題先行型である。それでも心は傷んだ。「言われてもしょうがない内容。でも、あのヤジは、次のこの試合に向けて、精神的にやる気を与えてくれました。スタミナ不足の不安を解消するために自分を追い込んでいます。走り込んでいます」 ■当初の目標はロンドン五輪だった 最初は、アマチュアボクシングでロンドン五輪を目指していた。「そのリーチの長さとスタイルがあれば世界で通用するよ」。おだてられ、その気になったが、アマの試合は3戦全敗。ボコボコに殴られ、頭の中にキーンと金属音が響いた気がした。 「これは無理と思うほどの力の差を感じた」。オリンピック、金メダル……夢は砕け散った。